2022年の大学入学共通テストのようす
2022年の大学入学共通テストのようす

鈴木七瑠さん(東大農学部2年、2浪) 「僕も仮面浪人組で、慶応大に通いながら2浪しました。2年しか浪人していない分際で恐縮です」

 浪人生には、どことなく暗いイメージもつきまとう。一番つらかったことは何だろう。

三浦さん 「1浪して、もう一度落ちたときです。『鬱って本当にあるんだ』というぐらい落ち込みました。高校の同級生は大半が現役で大学に進学していて、わずかな浪人仲間も1浪目で抜けていく。『自分何してるんだろう』と感じて、ひたすら辛かったです」

鈴木さん 「元同級生と自分を比べてしまうというのはありますね。出身校が主催する成人式があるんですが、そこに行った人たちの写真がまわってきたときは特につらかった。当時、雀荘でバイトしていたんですが、先輩から『自分の中での比較は大切だけど、他人との比較はあまり良くないよ』と言われ、ようやく自分の中で霧が晴れました」

杉山さん 「僕は1浪目に一橋大に受かっていたんですが、そちらを蹴って浪人することを同級生に話したところ『落ちた人たちに失礼だ』と詰められてつらかったです。浪人を選んだのは直感で、当時、明確な説明ができなかったことも確か。けれど浪人に限らず、自分自身の直感を重視すると、多数派が選ぶ道から外れることってあると思うんです。そのとき自分の気持ちをないがしろにすると、つまらない人生になってしまう。世間の基準や同調圧力を抜きに、将来を選べる社会であってほしいと思っています」

 浪人時代は勉強漬けとはいえ、たくさん時間がある。それゆえ、悩みも深まったという。

平野さん 「時間が決まった速度でしか進まないことです。『1年って長い、やることねえ』みたいな。2浪目とか本当にそうでした」

酒井さん 「一つには絞れないくらい、人生の全てが嫌でした。たかだか100年の寿命のうち2年が溶けてしまっていることの焦りや、将来どうなるかわからない不安が混ざり合い、しっかりと悩みました」

竹末さん 「女子ならではの悩みかもしれませんが、浪数を重ねるとモテなくなることが一番つらかったです。引かれてしまうんです。少女漫画を読んでも、浪人生の主人公なんて出てきません。大学に入ってからは『1浪です』と自己紹介をして、多浪の過去をひたすら隠し通しました。学部時代に付き合った人も何人かいますが、彼らにも本当の年齢は言っていません。実年齢は下の先輩たちが『私たちもう3女だからババアだよね』なんて話しているのを耳にすると、隠したい気持ちがより強まりました」

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得られた教訓も!