世の中は空前の猫ブームだが、繁殖業者による大量生産と、競り市を経由してペットショップで大量に犬猫が捌かれるというビジネスモデルの陰に幾多の「闇」が広がっていることを、誰が正確に認識しているだろうか。
朝日新聞の記者である著者は、この問題に取り組みはじめて12年を数える。効率を最優先する業界のルールのもと、身動きも取れないケージ、糞尿も垂れ流しという劣悪な環境で、年に3回、4回にも及ぶ出産を強いられて使い捨てられる犬猫たち。役目を終えた、あるいは売れ残った犬猫が行き着く「引き取り屋」の実態。容赦なくえぐり出される惨状に目を覆いたくなる。
犬猫の適切な社会化を促す「8週齢規制」導入が実現した改正動物愛護法成立の経緯にも詳しい本書を読んで、安易なペット熱を見つめ直したい。(平山瑞穂)
※週刊朝日 2020年1月17日号