乗車するのは、9時ちょうど発の高速列車「アル・ボラク」カサブランカ行きである。「アル・ボラク」とはアラビア語で「高速」を意味するそうだが、最高速度は日本の東北新幹線E5系「はやぶさ」と同じ時速320キロというから素晴らしい。
2018年11月にアフリカ大陸初の高速鉄道として開業したのだが、インフラはフランスのLGV(高速鉄道)、車両はアルストム社製のTGV・D(ダブルデッカー)である。この高速列車、中身は純フランス製ながら、車体のカラーリングはモロッコ国旗の朱赤をメインに、イスラムカラーのグリーンを配し、さらにアラビア文字が躍る外観はエキゾチシズムあふれるもの。
だがしかし、撮影に夢中になっていると警備員が現れて、「駅構内はノーフォト」と制止された。22年前は、自由に撮れただけに、モロッコも世知辛くなったようだ。
写真・文=櫻井寛
※『アサヒカメラ』2019年12月号から抜粋