70代の同窓会参加率が62.2%なのに対し、60代は42.5%、50代は24.8%。参加しない理由で目立つのは「自分に自信がないから」。鈴木信行『同窓会に行けない症候群』は、同窓会を介して平成30年間の経済と働き方の変化を追った異色の仕事論である。

 すでに引退した70~80代の昭和世代に比べて、現役の平成世代はなぜ同窓会を敬遠するのか。「自分に自信がある=社会的に成功すること」だとしたら理由は四つ。

(1)会社で出世しなかった。

 高度経済成長とバブルを経験した昭和世代は、こつこつやれば、誰でも成果が出せて出世できた。一方、平成以後の時代に求められるのはクリエイティブな能力だ。成果主義もあいまって、年下の上司も珍しくなくなった。

(2)起業して失敗した。

 ネットビジネスの増加などで起業のハードルは下がったが、その分、ライバルも増えて儲かりにくくなった。失敗すれば多額の負債が残り、廃業はしなくても成功しているとは限らないのが現状だ。

(3)「好き」を仕事にできなかった。

 バイク便ライダーは食べていけず、教師は私生活の犠牲を強いられ、トラック運転手もいまや高収入ではない。簡単には「好き」を仕事にできない時代なのだ。

(4)「仕事以外の何か」が見つからなかった。

 では仕事以外の生きがいをと思っても、日本にはワークライフバランスの環境が整っていない。

(1)から(4)まで、要はろくでもない労働環境だってことですよね。でもさ、そもそも同窓会なんて行く必要ある? 忙しい人に過去を振り返っている暇はないよ。その通りだとしつつも同窓会にこだわるのは、同窓会に背を向ける行為が<「旧友」とのパイプを自ら断ち切ることに他ならない>から。問題は「孤立化」だと。

 同窓会は旧来<手に入れた幸運を自慢しあう場>だった。高齢者が意気揚々と同窓会に行けたのは<あなたが偉かったのではない。偉かったのは「時代」なのです>。そうなんでしょうね。ま、男社会の病理って気もするけどね。

週刊朝日  2019年10月4日号