
AERAで連載中の「この人この本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
【写真】ふかわりょうさんの著書『ひとりで生きると決めたんだ』はこちら
『ひとりで生きると決めたんだ』は、ふかわりょうさんの著書。夏休みに自分のレギュラー番組の代役を見て複雑な気持ちになる「代役魂」、洗濯から車の運転まで日常生活の細かなこだわりを描く「人生は弱火で」など、「誰もが素通りする場所で足を止め、ゆっくり眺めること」から生まれた22編のエッセイを収録。ふかわさんに、同書にかける思いを聞いた。
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『ひとりで生きると決めたんだ』という意味深長なタイトルについて、ふかわりょうさん(48)はこう語る。
「自分でも覚悟なのか諦めなのかわからず、いろんな感情が入っています。結果的に自分から出てきた言葉につかまって生活しているようなところがあります」
表紙には群れから一頭だけ離れて立つ羊が写っている。アイスランド旅行のときに自ら撮影した写真だ。「決めたんだ」という力強い言葉とは裏腹に、羊の表情はどこか弱々しい。
「こういう言葉は強さや自信からではなく弱さから出てくるんです。羊も人間もひとりでは生きられない。でも、気持ちの上で一人というのは自然なこと。いろんな生き方が尊重される社会になってほしいという思いがあります」
生涯独身と決めたわけではないが、パートナーや家族と暮らしていたら遭遇しなかったこと、考えなかったであろうことをエッセイにしているので、今の自分の状況を大切にしたいと思っている。
「結婚はそんなに大きなものとは考えていないんです。同じ場所で足を止める人がいれば、それはそれで一緒に時間を楽しみたいなっていうぐらいですね」
子どもの頃から世の中の「当たり前」に違和感を覚えることが多かった。48歳になった今も一向に丸くならず、繊細さに磨きがかかって世間との乖離は激しくなるばかり。本当は時流に流されてみんなと大ヒット映画を観に行きたいけど、なかなか心が動かない。流されたらどんなに楽だろうとよく考えるという。