西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修さんは、サッカー日本代表の森保一監督の采配を高く評価する。
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サッカー日本代表は見事、1次リーグでドイツとスペインのワールドカップ優勝国を倒し、ベスト16に進出した。決勝トーナメント1回戦でクロアチアにPK戦の末におしくも敗れたが、森保一監督の言うように「世界で勝てることを示した」と思う。Jリーグができて30年。これまでは南米や欧州に追いつくことを目標にしてきた部分が多かったと思うが、追い越すことを考える段階に完全に入った。
どんなスポーツでもメンタルの部分で「自信」がないと、互角以上の戦いはできない。「勝てるかも」ではなく「こうやれば勝てる」という根拠というべきかな。それは「過信」とは違う。確かな技術と経験に基づく冷静な分析、判断があった上で、自分たちの強みをどう出すか。どう出せれば勝てるか。そして、目標達成のためのプラン作り。その点、今回の日本代表はどれも備わっていたのではないかと思う。
詳しい戦術的なところはわからないが、チームマネジメントという意味で、選手個々の能力把握、ベスト8を達成するための起用法は十分感じ取れた。2戦目のコスタリカ戦。初戦のドイツ戦からメンバーを変更して敗れたことがクローズアップされたが、サッカーという消耗の激しい競技で、もしレギュラーメンバーを固定していたら、3戦目のスペイン戦、決勝トーナメント1回戦で息切れしていたかもしれない。起用した選手を信じ、ベスト8に進むまでの4試合をマネジメントする。そして5人交代制をどうフル活用するか。これまでのW杯の敗戦経験も糧となったことだろう。
野球界も同じ。かつては骨折していても主力は試合に出ていたが、今は違う。レギュラーだけでなく、控え、もっと言えば支配下全選手の能力、メンタリティーを整えて試合に臨む。勝負事に完全正解などないが、森保監督は根拠と分析に裏付けられた自信を持ってタクトをふるったと感じる。