賛否はあるにしても、この人がいなかったら国会はもっと味気なかっただろう。山本太郎『僕にもできた! 国会議員』(取材・構成/雨宮処凛)は2013年の参院選で初当選した新人議員が6年間の議員生活を語った本である。
政治家の本は自らの政治的な信条と成果を得々と語ったものがほとんどだけど、この本は一味ちがう。本は雨宮処凛のインタビューに山本太郎が答える形で進行し、経済学者の松尾匡や憲法学者の木村草太との対話を挟み、政策についてもHP上での質問をベースに構成。秘書たちの証言も含め「仲間たち」総出演という印象だ。
<「変えたい」という気持ちだけで来たでしょ? それが政界の中に入って、「いや、ほんまにわかってないねんな」という自分に直面した>という山本議員。レクチャーを受けても<何が要点なのかもわからない(笑)>。しかし彼は化け、数々の成果を上げた。
西日本豪雨の被災地に100台の小型重機が導入された(18年7月)。女性活躍推進法の付帯決議にDVやストーカー被害者への支援に関する一文が加わった(15年8月)。生活保護世帯の子どものための制度の変更を求め(15~18年)、五輪にともなう公園からの野宿者追い出し問題を追及し(16年)、入国管理局の収容者の待遇が改善された(18年)。<だって、自分が当事者だったら動いてくれる政治家、欲しいでしょ?>
なのに派手なパフォーマンスにばかり衆目が集まる理不尽。無所属で当選した彼は14年12月、小沢一郎率いる「生活の党」(当時)と合流、党名は「生活の党と山本太郎となかまたち」に変わった。山本太郎は総理大臣になれるかという質問に小沢一郎は<それはもう少し修行して、みんなに認められなきゃいけない>と答えている。<総理を目指すんであれば、奇をてらっちゃ駄目>
それでも将来はとの質問に<一応、総理になります(笑)>と答え、参院選を前に「れいわ新選組」なる政治団体を立ち上げる気概は健在。異色の政治家の意外な真っ当さにきっと驚くはずである。
※週刊朝日 2019年5月17日号