衝撃的な一冊だ。

 独居老人の孤独死などが社会問題化して久しい。それでなくとも、子を思う親心からオレオレ詐欺に遭ったのに、当の息子から馬鹿呼ばわりされて失意のあまり自殺する父親、母親が認知症と知るや、行政の窓口を一度も叩かずにいきなり施設送りにしようとする娘など、心が寒くなるような事例に事欠かない昨今。

 儒教道徳の衰退と核家族化の進展、「個」の尊重などを通じて、旧来の親子関係の「濃さ」が消滅しつつあるのだ。

 著者は文筆業のかたわら、「高齢者の居場所」としてのコミュニティサロンを運営してもいる。そこでの経験を踏まえて提唱するのは、「捨てられる側の知恵」だ。「棄老」はもはや不可避の流れ。問われるのは、その中で高齢者がいかに相互扶助を実現させていくかだ。(平山瑞穂)

週刊朝日  2019年4月19日号