図3は東海側が用意した各施工区間を基に鹿島と大成が作成したとされる受注希望工区の“星取表”だ。鹿島と大成が想定した割り振りを受け取った大林は、自社の希望を書き添えた。

 裁判で証言した大林の幹部は、社内資料を競合に渡す際に書類のフォントを社内で使っているゴシック体から明朝体に変えたり、電話で数字を連絡する際に幅を持たせて伝え、「少しでも談合罪の度合いを減らそうとした」と告白した。

 証言に基づき作成した図4からは、見積額についての4社間のやりとりがたどれる。

 大林は鹿島と大成の初公判2週間前に、談合に関する第三者委員会調査結果報告書を会社のホームページに掲載している。その内容は「自社を擁護している印象」(ゼネコン幹部)を与えるもので、その上裁判で鹿島と大成に不利な証言をする振る舞いに、2社は「このままこっちが悪者扱いされるのは我慢ならない」と怒りを増幅させている。

 起訴されるとほぼ有罪になる刑事裁判で鹿島と大成は明らかに不利。それでも2社は「対大林」の意味でもあらがう。

 もっともリニア関連の入札で蚊帳の外にいる中小ゼネコンらにすれば、判決のゆくえも対立も一時の話。重要な大規模工事を大手が掌握する構造は今に始まったものではない。リニア案件の受注状況はその象徴だ(図5参照)。

 談合が発覚した目下、入札やり直しで中堅がおこぼれにあずかるケースが発生し、工事を大手以外も含めて業界で分け合う事態になっているのは皮肉である。