和歌山県警本部に最近、見慣れない数人の男たちが出入りしている。
師走の忙しい時期にわざわざ、東京から足を運んだのは警察庁関係者だという。
「年末に東京からやってくるほどの事件となれば、ドン・ファン事件についての協議じゃないですか」(捜査関係者)
今年5月24日に和歌山県田辺市の会社社長、野崎幸助さん(享年77)が覚せい剤中毒で死亡した事件は、今も解決に至っていない。資産30億円を持ち、4千人の美女と逢瀬を楽しんできた、と豪語していた野崎さんの「怪死」はワイドショーなどで大きな注目を集めた。
和歌山県警は事件直後に野崎さんの自宅などを捜索。6月には被疑者不詳の殺人罪で55歳年下の妻Sさんの東京にある別宅、会社など関係先を捜索したが、捜査の進展はみられなかった。だが、ここにきて、和歌山県警の動きがあわただしいという。
野崎さんの経営していた、貸金業と酒類販売会社のA社の代表取締役に妻のSさんが2018年(平成30年)7月30日付で就任したと会社の法人登記簿が書き換えられていたのだ。しかも登記されたのは、就任から約3カ月遅れの同年10月26日付。さらに奇妙なことに同日、書き換えられた登記簿では野崎さんが2011年(平成23年)12月31日に社長を辞任していた、と変更されていた。
今年6月に筆者が登記簿を取得した際、A社の代表取締役は野崎さんだった。
「しかも野崎さんの辞任日は2011年12月31日土曜日。社長退任となると、取締役会などを開催して、退任と新しい社長の就任を決めることが一般的ですが、12月31日なんかに取締役会を開く訳がない。Sさんが代表取締役に就任後、書き換えられた法人登記では、野崎さんが社長辞任後の7年間、社長が不在のまま、貸金業と酒類販売の業務を続けていたことになる。しかも未登記のまま…」(A社元従業員)
A社で2011年当時、取締役だったBさんはこう証言する。