65歳まで日本プロレス界の「生ける伝説」として第一線で活躍し続け、現在はタレントとして多岐にわたる活動をおこなっている天龍源一郎さん。バラエティ番組などで見せるあまりの滑舌の悪さが印象に残っている皆さんも多いかもしれません。
 そんな天龍さんが雑誌『月刊BUBKA』で連載してきた「天龍源一郎の人生相談 龍魂一答」を単行本化したのが本書。仕事や恋愛・結婚、人間関係、生き方などに関する相談や質問への天龍さんの回答は優しく、ときに強く、そしてとても正直。世界一滑舌は悪くとも"最も聞き取りやすい"、生きる上でのヒントが詰まった一冊となっています。
 たとえば「いい上司であり、いい部下であることを求められる中間管理職になってストレスがたまります」という仕事のお悩み。これはある程度の年数、組織の中で働いている人であれば誰しもぶつかることではないでしょうか。
 これについて天龍さん、「上司にも部下にもどっちにもイイ恰好をしようと思っているから疲れるんだ」とバッサリ。では上司と部下、どちら側につけばいいのかというと......。
 「それだったら、そのとき力のある人間に寄り添って生きていくのがいちばん間違いがないし、疲れないよ」とのこと。続いて、全日本プロレスでがむしゃらに自分をステップアップさせ、ジャイアント馬場から信頼を得るようになった、そうしたら後輩を飲みに連れまわしても文句を言われなかったと語ります。自身の体験談、しかもあのジャイアント馬場まで登場するとなれば、なんとも説得力のある答えですよね。
 ほかにも「二次元の女性キャラが好きで、生身の女性の魅力がわかりません」という恋愛の悩みを持つ男性には、「生身の女性は変化があるからいいんだよ」との回答をする天龍さん。
「生身の女性と付き合うと、うまくいかなかったり葛藤もあるけど、逆に100%応えてくれるときの嬉しさもある。年をとるにしたがって自分の色に染まっていく女の人を見るというのは満足感が高いものだよ」と話します。年齢を重ねてきた人間ならではの円熟味ある回答にこれまた納得させられます。
 勝負の世界で体ひとつで生き抜いてきた天龍さんだけに、ガツンとした豪快なアドバイスを喰らわせるのかと思いきや、そこにあるのは相談者に寄り添うように悩みと向き合う、優しく繊細な姿。これにはBUBKA編集部も「はじめに」で「ただひとつ予想外だった」と本音をこぼしています。プロレスでの天龍さんとはまたちがった一面を見ることができるのも、ファンにとってはうれしい一冊ではないでしょうか。
 そして天龍さんの特別なファンではなくとも、本書の悩みはきっと多くの人たちに共通するもの。人生というリングでもがくすべての人たちに、勇気や励ましが届くような内容になっている本書。年末年始、自分を見つめ直すことも多いであろうこの時期に皆さんの役に立つ一冊となってくれるに違いありません。