大人だって同じです。たとえば、販売店などであれば、マネジャーが営業担当者を管理します。一人ひとりの営業担当者に適切な目標を示し、営業プロセスを指示して、進捗状況を把握し、時には必要な助言やサポートをすることで、ようやく売上目標に近づくことができます。
マネジャーが管理してもいないのに、営業担当者が自発的に売上を上げてくれることはありません。
大人でさえ、上司から適切な指導がなければきちんと仕事ができないのですから、子どもであればなおさらです。
子どもは、困難を避けてイージーゴーイングな道を選びがちです。保護者によってきちんとしつけられなければ、勉強どころか挨拶の仕方、食事のマナーだって覚えません。
動物も同じ。馬だって生まれたままに育ったら、人間を背中に乗せて走ったりはできません。人間の管理下できちんと調教されるからこそ、競走馬になることができるのです。
「管理」という言葉には、何かに縛り付けるような、そんなイメージがあるかもしれませんが、そうではありません。環境を整えてあげるということです。
環境を与えられずに放っておかれた子どもは、そのまま育つとどうなってしまうのか。
渋谷や新宿などの繁華街に行けば、たくさん見ることができます。誘惑に満ちた大人の世界に落ちていってしまった子たちを……。
彼らにもきちんとした環境が与えられていれば、間違いなく高等教育の道に進むことができたはずです。
日本にこれだけ塾が多いのは、勉強する環境を整えてあげれば成績は上がるし、将来的に子どもの幸せにもつながるというニーズに応えているからです。環境の大切さの証しといえます。
私は何も、子どもを塾に行かせるべきだと言っているのではありません。
保護者は子どもを野放しにするのではなく、子どもにきちんと関わって、勉強はもちろん、生活習慣、善悪の判断などを教えてあげてほしいのです。
「うちは自由放任主義だから」「本人の自主性に任せているから」というご家庭はじつに多いのですが、果たして本当にそれで大丈夫なのでしょうか。単に保護者の責任を放棄して、野放しにしているだけというケースはよくあります。
小学生の頃までは成績優秀で、難関中学校へ合格したような子でも、何かのきっかけでまずい方向に落ちていってしまうことがあります。
我が子がどのように育つかは、天から与えられた才能ではなく、環境、保護者の関わり方次第ということです。
【POINT】
勉強ができる・できないは遺伝や才能ではなく、
ほぼ100%環境によって決まる。
(河端真一:法学博士)