甚大な被害をもたらした今回の豪雨。記録的な大雨が継続した原因を2つのポイントで解説します。

広島県の様子(7月10日安佐北区・11日安芸郡熊野町にて撮影)
広島県の様子(7月10日安佐北区・11日安芸郡熊野町にて撮影)
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西日本・東海地方各地の降雨状況

7月6日から7月8日午前中にかけての雨雲の動きを動画にしました。
■YouTube(外部リンク) https://www.youtube.com/watch?v=I83rfTxXhks)
画面に収まりきらなかった九州地方や東海地方の雨雲の様子は、静止画となってしまいますがtenki.jpの7月の過去天気をご参照ください。今回の豪雨のはじまりは、7月3日から4日にかけて九州の西から日本海へと北東に進んだ『台風7号』です。台風に向かって南寄りの暖かく湿った空気が流れ込み、西日本では九州・四国地方を中心に一日の降水量が100ミリを越える雨が降りました。
その後、7月5日から7月8日にかけて梅雨前線が西日本付近に長時間停滞し、前線に向かって暖かく湿った南西の空気が流れ込み続けたため、広い範囲で大雨が続きました。
高知県では、降りはじめからの降水量が1500ミリを超え、岐阜県や九州北部および九州南部では900ミリ以上に達しました。この大雨により、福岡、佐賀、長崎、広島、岡山、鳥取、兵庫、京都、高知、愛媛、岐阜の11府県に対して大雨特別警報が発表されました。広い範囲で河川氾濫や土砂災害が発生し、「平成最悪」と言われるほどに各地で甚大な被害となりました。

6月28日から7月8日までの累積雨量分布図(国土交通省解析雨量)
6月28日から7月8日までの累積雨量分布図(国土交通省解析雨量)

豪雨の原因①~西日本付近に停滞した梅雨前線~

広い範囲で長時間にわたって大雨が継続した理由の1つに、「梅雨前線の停滞」が挙げられます。
梅雨前線は4日ごろまでは日本海北部に北上していました。しかし台風7号から変わった温帯低気圧が日本の東に進んだ後、オホーツク海高気圧の勢力が強まるとともに、太平洋高気圧も日本の南海上まで広がったため、梅雨前線は南下し、5日から8日にかけて西日本付近に長時間停滞しました。この数日間、気圧配置があまり変わりませんでしたが、8日の午後にはオホーツク海高気圧の中心が東へ進み、梅雨前線は日本海へと北上した影響で、西日本を中心とする大雨は収束へと向かいました。

豪雨の原因②~上空に流れ込み続ける大量の水蒸気~

広い範囲で長時間にわたって大雨が継続した2つめの理由は「大量の水蒸気」の存在です。
太平洋高気圧の縁(ふち)をまわって、暖かく湿った空気が梅雨前線に長時間流れ込み続けました。この暖かく湿った空気には、「大量の水蒸気」が含まれていました。大量の水蒸気を含んだ空気が、前線付近で北からの冷涼な空気とぶつかって上昇すると、発達した積乱雲となり、地上では大雨になります。
実際にはどれだけの水蒸気が含まれていたのか・・・6日15時ごろの上空の水蒸気輸送量(水蒸気フラックスと言います)をみると、九州地方から岐阜県にかけて、大量の水蒸気を含んだ空気が流れ込んでいることがわかります。また、この水蒸気がすべて雨になって地上に落下した場合の降水量(可降水量と言います)をみると、60ミリ以上の非常に大きな値が岐阜県より西の地域を広く覆っていることがわかります。
このように西日本の上空には、大雨を降らせる水蒸気がたくさん存在していたため、それらが雨となって地上へと降り続いたのです。

実は、今回の被害を降水量という数字だけで語ることはできません。地域によって気候や地形・地質が異なるため、同じ量の雨が降っても、被害の出方に違いがでてきます。
お住まいの地域が土砂災害や浸水害に対して、どのようなリスクが想定されているか、国土交通省のハザードマップ(外部リンク)などで確認することができますので、まだご覧になったことがない方はこの機会にぜひご確認ください。
また、日本気象協会では、平成30年7月豪雨で集中的に大雨を降らした雨雲である「線状降水帯」の発生回数を解析しています。詳しくは日本気象協会のニュースリリース(http://www.jwa.or.jp/news/2018/07/post-001044.html)をご参照ください。
被害にあわれた方々に心よりお見舞いを申しあげるとともに、被災地の一日でも早い復旧を日本気象協会職員一同、心よりお祈りいたします。

7月6日15時における大気下層の水蒸気フラックス(左)と可降水量(右)
7月6日15時における大気下層の水蒸気フラックス(左)と可降水量(右)