周知のとおり、3月2日の朝日新聞のスクープをきっかけに、財務省による森友学園の土地取得に関する公文書改竄が明らかになった。驚いた。と同時に、やっぱりな、と納得してしまった。私がずいぶん前から感じていた思いは青木理の新刊タイトル──『情報隠蔽国家』となっていた。
青木は実名で登場する当事者(現役自衛官、元・公安調査官)へのインタビューを核に、国家機密の隠蔽や公安調査庁の謀略活動の実態を紹介。また、長年にわたる取材経験を活かし、公安警察と前川(前・文部科学事務次官)スキャンダルの関係を読み解く。週刊誌に連載されたコラムやノンフィクション作家保阪正康との対談も併せ、国民の情報を吸い上げる一方でますます公的情報を隠す政府の姿勢を、終始、強い危機感をもって批判する。
近代民主社会において、国家の情報は基本的に国民の共有財産だ。国の機関であれ、自治体であれ、治安組織であれ、私たちが付託した権限と税金で運営されているからだ。外交など一定の秘密が必要となる場面はともかく、この原則は民主主義の根幹となっている。公的情報が隠蔽され、時に破棄されれば、私たちは判断の材料を失う。文字どおり暗中模索となり、為政者の意のままに引きずり回されかねない。私たちの戦後はそうなってしまった反省から始まったはずなのに、現政権下では、独善的な情報管理が定着しつつあるようだ。……と書いたところで、防衛省が国会で「不存在」と明言した陸上自衛隊のイラク派遣時の日報が「見つかった」との報が入った。
私は今、青木の危機感と怒りに激しく共感している。
※週刊朝日 2018年4月20日号