ムッシュかまやつこと、かまやつひろしほど過小評価されているミュージシャンはいない。グループ・サウンズのスパイダースで大活躍し、旧制高校生の愛唱歌のような「我が良き友よ」のヒットもあったから、評価されていたではないか、と思う人が多いかもしれない。しかし認められたのは芸能界の有名人としての行動であり、音楽的主張ではなかった。

 フォークとロックのミュージシャンが反目していた時代に、両方の人たちと分け隔てなく共演したが、それは自分好みの音楽を追求し続けるための方法論だった。新しい音楽の動きにもいつも目配りしていた。ただし何をやるにしてもスタイリッシュにというモットーは忘れなかった。そんな彼の活動をていねいに掘り起こした研究書の登場に拍手を送りたい。本当に彼は稀有な存在だった。

週刊朝日  2017年12月8日号