著者は自身の子供の誕生を機に世界のお産を巡る旅に出る。子供を産むとは、育てるとはどういうことか。3年をかけ、グアテマラ、ホンジュラス、タイからヨルダン、シリアまで途上国をまわった。

 内戦下で兵士にレイプされ妊娠した女性、HIVの蔓延で両親をなくし、親戚をたらい回しにされる孤児、スラムで金目の物を探し、ゴミを漁る母子。途上国の環境は子育てには劣悪だが、「彼らは絶望することはない」と著者は説く。親にとって子供は希望であり、かけがえのない「未来」であるからだ。

 著者が実感したように子供ひとりの命が持つ可能性は等しく、親の愛情は国を問わず深い。我々が状況が悲惨だと思う時だけ悲惨になる。環境は過酷だが、その過酷さを吹き飛ばす笑顔が紛争地にもHIV病棟にもある。

週刊朝日  2017年7月7日号