"どちらにお住まいですか?"と尋ねられたとき、首都圏に住んでいる人は多くの場合、自分の"最寄り駅"を答えてはいないでしょうか。そしてその際、首都圏鉄道路線研究会による本書『駅格差 首都圏鉄道駅の知られざる通信簿』に記される、次のようなエピソードに心当たりのある方も多いはず。



 「若者に人気の駅ランキングの常連である小田急線・京王線の下北沢駅と、その隣駅である京王線の池ノ上駅にそれぞれ同じ徒歩10分かかる場所に住んでいたとして、どちらを最寄り駅だと他人に公言するのか。どちらと公言しようとも、生活の実質的な部分は変わらないのだが、下北沢と言ってしまう......。それが駅の魔力だ」(本書より)



 そんな地域のランドマークともいえる、首都圏の駅の数々に注目した本書では、乗降人員数からトイレの利便性にいたるまで、さまざまな観点から首都圏の駅を分析、ランキング化。駅の格差を浮き彫りにしていきます。



 たとえば、"駅地下街の充実度ベスト5駅"。本書によれば、駅地下街の店舗数が419店舗と他を圧倒し、見事第1位となったのは東京駅。八重洲地下街、グランスタ、東京駅一番街など、東京駅は地下街だけでも9つもあるそう。なぜここまで駅地下が発展したのか、その理由のひとつとして東京駅の構造をあげます。



 「新幹線の始発駅である東京駅はJRだけでも8路線が乗り入れし、総武線、京葉線のホームは地下にある。初めて行くと、とても複雑な構造で迷ってしまう。さらにここから地下鉄に乗り換えるとなると、また地下道を歩く。駅の構造として、地下を歩くことが多い」(本書より)



 ちなみに第2位以下は、新宿駅180店舗、川崎駅163店舗、池袋駅156店舗、横浜駅116店舗と続くとのこと。



 続いて、"駅トイレ利便性が高い駅"のランキング。男女によって、そのランキングは異なるようです。JR駅の板橋駅、池袋駅、日暮里駅、上野駅、秋葉原駅、浅草橋駅、八丁堀駅、東京駅、品川駅、大井町駅、恵比寿駅、渋谷駅、中野駅、新宿駅のトイレをそれぞれ調査したという本書によれば、男性にとって最も利便性が高いのは東京駅。東京駅は改札内に設置されたトイレが13ヵ所(小便器90以上、個室58)と豊富にあるため、駅利用者数の多さにもかかわらずトイレの混雑がないのだといいます。さらに、リニューアルによって設備も新しく、清掃が行き届いているのだそうです。



 一方、東京駅のトイレは女性にとっては第5位。第1位となったのは、JR総武線の浅草橋駅でした。浅草橋駅は、「1日の乗降人員数5.4万人(2015年度)という小さな駅なので、トイレ箇所は2ヵ所、しかし便器総数は洋式と和式合わせて8つとわりと多め」(本書より)のため、混雑していないのだといいます。また、隣の秋葉原駅は、不衛生ではないものの非常に混雑しているため、総武線を利用する際には浅草橋駅での使用がオススメなのだそう。



 ご自身が住んでいる地域の最寄り駅はいったいどのように分析されているのか。早速チェックしてみてはいかがでしょうか。