黒木華が声を失うおきくを熱演
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江戸時代のサーキュラーバイオエコノミー(循環型経済)を題材にした青春時代劇。100年後の地球に残したい「良い日」を「映画」で伝える「YOIHI
江戸時代のサーキュラーバイオエコノミー(循環型経済)を題材にした青春時代劇。100年後の地球に残したい「良い日」を「映画」で伝える「YOIHI PROJECT」第1弾。4月28日からGW全国公開。(c)2023 FANTASIA

 中次というのは、生きるために飯を食うために仕事をしていて、特に生に対して頓着がないんです。矢亮は夢や希望があって、どんなことをしてでも成り上がるという一つの世代の型です。僕の父(佐藤浩市)が演じた源兵衛は階級も高く、いろんなことがある程度見えていて、死ぬ間際に下の世代に何かを残して死んでいく。石橋蓮司さん演じる孫七もそうです。そんなふうに、この映画にはそれぞれの世代の、伝えたいことのある代表者がそろっている。僕は何かが回りだすきっかけになっているシーンがすごく好き。だから、全部のシーンが好きです。

阪本:僕は適当に撮ったシーンは一つもないので好きなシーンを選ぶのは難しい。ただ、撮影中に脚本には書いていない、ふっと生まれる場面があるんです。今回なら例えば、終わりの方で中次と矢亮が草の上で寝転んで昼寝をするシーン。寝転んだ2人が足を蹴飛ばし合いながらじゃれあっている。曇るのを待っている間、時間がもったいないから一瞬で思いついて撮ったけど、そんな2人の姿にバディな匂いを感じたというか、「こいつらはこれからも離れないだろうな」というような関係性が見えた。いくら脚本をきっちり書いていても、こういうシーンが含まれることで、映画はどこか良い方向へ変わってくるんだよね。

寛一郎:僕にとって本当に経験したことがない映画になりました。

阪本:実際、時代劇で章にわかれた短編集のような映画なんてないと思うんだ。そうならざるを得なかったんだけど、今はこの作りも含めて気に入っている。最終的にできたものが正解だと思っています。

寛一郎(左)と池松の息もピッタリ
寛一郎(左)と池松の息もピッタリ

寛一郎:阪本監督はどんな役者にも愛がありますよね。メインの役者だけでなく、役者一人ひとりに対して、すごく愛を持って撮っている。スタッフの皆さんに対してもそうです。そういう監督は意外と少ない。きちんと愛を持って撮っている阪本監督は素敵だなと思います。

阪本:寛一郎くんは「一度も撃ってません」の時は数少ない若手出演者の一人で、それこそ僕は初めて目の前で君の演技を見た。そういう中で一つひとつ確かめながら演出した覚えがあります。

寛一郎:あの時はガチガチでした。父(佐藤浩市)との共演も初めて。今回は監督と話し合いもし、一緒に作品を作れたなと思えました。

阪本:そうだね。お互い知らない時代の話だから年齢差は関係なく、特に最初の短編2作は話し合いながら一緒に作った感覚がある。短編を撮る前に1回だけど一緒にご飯を食べる機会もあったし。あれでより寛一郎くんの素の部分を知ることができた。長編にする時に、顔や声色を以前より明確に浮かべながら脚本を書きました。もっとも中次の性格が、寛一郎くんにどう寄り添っているかはわからないけどね(笑)。

(構成/ライター・坂口さゆり)

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週刊朝日  2023年4月28日号より抜粋

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