4年前に撮影された今回の加害個体とされる母グマと同一個体の可能性が高いメス成獣=石名坂豪さん提供
4年前に撮影された今回の加害個体とされる母グマと同一個体の可能性が高いメス成獣=石名坂豪さん提供

事故現場は見通しが悪い場所

 知床財団の調査速報によると、今回の事故では、母グマは子グマを守るために男性を攻撃したようだ。被害者がヒグマと遭遇したと推定される地点は、オホーツク海が望める岩峰(通称、560メートル岩峰)の南側だ。日当たりのよい岩峰付近には、アリの巣がたくさんあるという。

「夏になると、それまでエサにしてきた植物が硬くなるため、アリの巣を掘って、幼虫やさなぎを食べるクマがこの場所に集中する」

ハイマツの中を歩くヒグマ=環境省提供
ハイマツの中を歩くヒグマ=環境省提供

 登山道はその脇にある。事故現場は岩峰の陰で木々が迫り見通しが悪い場所だった。

「登山者が母子グマに気づかずに接近したら、母グマは威嚇します。不用意に子グマに近づいてしまったら、母グマは攻撃してくるかもしれない。そういう状況に非常になりやすい場所でした」

 死亡事故発生以来、羅臼岳にいたる登山口は閉鎖され、再開のめどは立っていない。

 クマと遭遇する可能性がある場所を通る際は、万が一クマと鉢合わせした場合の対策を知っておきたい。

(AERA編集部・米倉昭仁)

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