
絵を描く原動力は純粋な「描きたい」
──ボールペンで描き始めた絵も、油絵やオイルパステル画のほか、水彩と塩を使ったりしながら、多彩な作品を生み出している。
画材の知識もなく、家にこもっていたので、最初はボールペン1本で描いていました。ボールペンで描くのはとにかく時間がかかるから、当時の私にとってはありがたかった。画家として活動をスタートしてからは、いろいろな画材を試すようになりました。活動を初めてしばらくは、上手く絵が描けるということを見せたい気持ちも強かったんですが、やがて絵を描く原動力は純粋な「描きたい」という気持ちに変わっていきました。
――バラエティー番組「プレバト!!」に出演し、水彩画の特待生第1号となるなど、画家・俳優として活動の幅が広がっている。今の状況を尋ねると、「理想的かもしれない」と答えた。
私にとって絵画は評価関係なく、好きなことを好きにできる場所。昆虫を描くのが大好きですが、ただ自分が描きたいから描いているだけで、ウケが悪いかどうか気にしないようにしています。自由に表現できる場所を見つけられてとても幸せですし、今の画廊で展示が続けられて、人に作品を見ていただける状態が、私にとって最高なんです。

「自分の好きな世界」追いかけたい
――かつての自分を振り返って、「無駄なことは一つもなかった」と言い切る。
20代半ばまで右往左往して回り道をしてきたと思います。自我と激しくぶつかって苦しかった当時を思うと、懐かしく愛おしい感覚です。多くの人に言えることかもしれませんが、自分に慣れてくるんですよね。期待に応えられなかったり、自己嫌悪に陥ったりする状況や、摂食障害にも慣れてきて、対応できるようになっていく。人生のすべてに意味があったと思っています。
――自分を見せることを恐れていた日々は終わった。今、「表現者」としてどんな思いを抱いているのだろうか。
はやりや評価や肩書きに左右されることなく、「私はこれが好き」「自分はこれがしたい」と活動しているアーティストや、作品を見るとすごくワクワクするし、幸せな気持ちになります。私も、自分の好きな世界を真っすぐに追いかけて、表現していきたい。私を見て、「こんなふうに表現していいんだ」と思ってくれる人がいたら、元気になってくれる人がいたら、すごくうれしいです。
