
熱戦が繰り広げられた甲子園。今大会で目立ったのが2年生投手の活躍だ。菰田陽生(山梨学院)、織田翔希(横浜)、末吉良丞(沖縄尚学)、柴田蒼亮(岐阜商)、高部陸(聖隷クリストファー)らがマウンド上で躍動した。
【写真】こちらは3年生。大会ナンバーワン投手といわれたのはこの人
その中で、「モノが違う。成長速度が凄い」とバックネット裏で視察したスカウト陣が口をそろえたのが、山梨学院の身長194センチのエース・菰田だ。8月21日の準決勝・沖縄尚学戦で先発した際に右肘を痛め、初回に16球を投げ終えたところで降板。試合後は涙を流していたが、初戦の聖光学院戦から4試合登板で計222球を投げた投球は強烈なインパクトを与えた。3回戦の岡山学芸館戦では150キロを計測し、6回途中1安打無失点。打撃でも3安打3打点を記録した。
投打の二刀流で「大谷翔平2世」の呼び声が高いが、セ・リーグ球団のスカウトは「菰田は投手で勝負するべきでしょう」と分析する。
「将来、どんな投手になるか想像できないですね。身長が190センチ以上ある投手は高校の時に線の細さが目立つことが多い。ダルビッシュ有(パドレス)、大谷翔平(ドジャース)もそうでした。でも彼は違う。下半身が太くてどっしりしている。体が大きいだけでなく、しなやかさを持っているのも魅力です。大きい体を器用に操作し、リリースの感覚が繊細で大崩れしない。来秋のドラフト1位で複数球団の争奪戦になることは間違いない」
かつて、パ・リーグでプレーした球界OBは「二刀流に挑戦するのは大賛成。可能性がある限り挑戦したほうがいい」とエールを送った上で、やはり投手として高い評価を口にする。
「いい打者だと思いますよ。でも現時点の話ですが、彼の才能が光るのは投手だと思います。手元でうなりを上げる剛速球の軌道が、江川卓さんと重なるんですよね。打者は球速表示以上の威力を感じるでしょう。制球を磨く必要があるし、変化球の精度もまだまだだけど、裏を返せばそれだけ伸びしろがあるということ。今秋のドラフト1位候補として注目された石垣元気(健大高崎)は150キロ以上の直球をバンバン投げていたけど、スケールの大きさという点では菰田のほうが上かもしれない」
甲子園にはメジャー各球団のスカウトも視察に訪れている。東地区の球団のスカウトは「菰田はちょっと次元が違う。まだ潜在能力の半分も出していないでしょう。これからフィジカルや技術を強化すれば凄い選手になる。今すぐにでも連れて帰りたい逸材ですよ」と絶賛していた。