(撮影/写真映像部・上田泰世、スタイリスト/吉川雄太)
(撮影/写真映像部・上田泰世、スタイリスト/吉川雄太)

「おじさんのくしゃみ」に思うこと

――友達になって、果物をもらうまでのプロセスが楽しいみたいなことですか?

 それとも違うんです。店に並んでる果物も勝手に食べたら怒られるけど、買えばいいじゃないですか。でも、庭先の果物は持ち主と友達にならないと無理なんです。「一生これを味わえない」と思うと後悔しそうな気がするから、たとえばロケのときは、近くに住民の方がいたらお願いしてみたりするんです。それがロケだったりすると、番組として意外とおもしろくなることもあったりして。

――全然考えたことがない方向のお話ですごくおもしろいです。そういうところが亮さんの持ち味で、周りの方にも刺さったんでしょうか。以前、ご自身について「タレント力が強くない」と話しているインタビュー記事を読みました。亮さんが思うタレント力はどんな力のことですか。

 ディレクターや演出家の方のやりたいことをふまえて動ける人は、タレント力が強いなと思います。それが華やかに見えれば見えるほどいいなと思うけど、地味な人でもそこが良かったりもする。きっとそのインタビューに答えていたときの僕は、自分はその意図と反する動きをしていることが多いと感じていたんでしょうね。

 だけど、いまさらそれを身につけろというのは無理やなという気持ちもあります。当時はそれをコンプレックスだと思っていたかもしれないけど、そこに諦めがついたというか。

 そういえば最近、自分のくしゃみの音がすごいうるさいことに気づいたんですよ。

――くしゃみの音ですか?

 子どものころは、おやじや親戚のおじさんのくしゃみがうるさいことが不思議で仕方なかったんです。でも、この前家でくしゃみをしたときに、「うわ、でかっ」と思って。一緒にいた奥さんも「でかっ」って。

(撮影/写真映像部・上田泰世、スタイリスト/吉川雄太)
(撮影/写真映像部・上田泰世、スタイリスト/吉川雄太)

――自分もお父さんや親戚のおじさんのようになっている、と。

 なんでやろって、冷静に考えたんですよ。「おじさんのくしゃみ」が何ででかいのか。

――理由はわかりましたか。

 人の迷惑とか関係なしにあらゆる気持ちを解放して、自分の気持ち良さだけを優先したら、バシャーン!っていうくしゃみになります。あれは自分のことしか考えてないですよ。人前やったらもうちょっと抑えるんですけど……僕はもう、「あのときのおじさん」になってるかもしれません。

――解放されたんですね。くしゃみが大きくなったのは突然ですか?

 いつからなのか、わからないです。奥さんに「うるさいなー」って言われて、我慢しようとしていない自分に気がついたんです。「おじさんと一緒や!」「そっちのモードになってきてる」って。

 でも、女の子は「クシュン」ってうそみたいなくしゃみしますよね。あれはうそやろって思います。

(構成/AERA編集部・福井しほ)

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