アグネスさんと実母。「6人の子どもを育て上げた母は、小柄ながら行動的で、いつも明るく、おしゃれを忘れない人でした。今、あらためて母とのつながりを深く感じる瞬間が増えています」と話すphoto 本人提供
アグネスさんと実母。「6人の子どもを育て上げた母は、小柄ながら行動的で、いつも明るく、おしゃれを忘れない人でした。今、あらためて母とのつながりを深く感じる瞬間が増えています」と話すphoto 本人提供
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 介護には、どうしても「大変」「つらい」といった印象がつきまといます。でも、アグネス・チャンさんは、実母の晩年をともに過ごすなかで、「そばにいる」ことの意味、そして「強さ」とは何かに気づいたといいます。アグネスさんの新著『ひなげしはなぜ枯れない 心も体もしなやかでいるための45のヒント』に綴られた介護についての想いとは。同書から一部抜粋・編集してお届けします。

【写真】100歳で逝った実母とアグネス・チャンさんの2ショット

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 母は今年の6月に100歳でこの世を旅立ちました。晩年、私は母のいる香港にちょくちょく帰り、病院にいる母に会いに行きました。

 若い頃は仕事と子育てに追われて、帰郷する余裕はあまりありませんでした。 6人きょうだいのなかで、遠く離れた国に嫁いだのは私だけ。「私だけが親孝行できていない」そんな思いを、どこかでずっと抱えていたのかもしれません。だからこそ、晩年に得られた母との時間は、かけがえのないものでした。

アグネスさんと100歳でなくなった実母。介護を通し「一緒に笑い合える時間があるだけで親孝行」だと思うようになったという(photo 本人提供)
アグネスさんと100歳でなくなった実母。介護を通し「一緒に笑い合える時間があるだけで親孝行」だと思うようになったという(photo 本人提供)

「そばにいる」ことに意味がある

 介護は、やはり程度の差はあっても大変です。でも、私は「そばにいる」ということには、やっぱり意味があると思っています。

 たとえ何かをしなくても、そばにいて一緒にお昼寝をするだけでも、親子のつながりを感じる、かけがえのない時間になります。

 よく「子育てをすると、親自身が強くなる」と言いますが、介護も同じだと思います。

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