※写真はイメージです(gettyimages)
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総務省が1月31日に公表した住民基本台帳に基づく2024年の人口移動報告を見ると、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川の4都県)では、転入者数が転出者数を上回る「転入超過」が13万5843人となり、前年から9328人拡大した。

これは、新型コロナウイルスの感染が拡大する前の2019年(14万8783人)の水準に近づくものだ。コロナ禍で一時的に落ち着いたかに見えた東京一極集中の流れが再び強まっている。未婚化や少子化、そして地方創生に焦点を当て、前後編に分けてこの問題に食い込んでいきたい。

前編:未婚化、少子化、地方創生… 日本が抱える大体の大問題は「県人会」を活用すれば解決する
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「東京の中の地方」は地方創生にも貢献しうる

 前編で紹介した「東京の中の地方」が未婚化の解消、ひいては少子化対策と同等、いや、それ以上に貢献できるのが地方創生だ。

 在京期間が長い地方出身者が東京で得た多様な知見・人脈を使い、地方独自の「らしさ」の付加価値を高めることができる。地方都市の地方創生に関する政策を見ていると、その多くはいまだに観光依存の現状から脱し切れていない。違う方向にも目を向けるべきではないか。

 この点では、アメリカ・テキサス州オースティンの事例が参考になる。この片田舎の州政府と大学の街が、30数年でハイテク・クラスターに変貌したのだ。その背景には、住民のイニシアティブによる不屈かつ持続的な挑戦、企業家と支援者たちのダイナミックなネットワーク、保守的な大学の変化、などがあった(福嶋路・東北大学大学院教授、日本ベンチャー学会会長の著書『ハイテク・クラスターの形成とローカル・イニシアティブ―テキサス州オースティンの奇跡はなぜ起こったのか』<2013、東北大学出版会>に詳しく書かれている)。

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