
多摩川は全国で3番目に事故が多い
近年、水難事故が増加している。警察庁によると、昨年は過去10年で最多の1535件、1753人。そのうち死者・行方不明者は816人(約47%)だった。意外に思うかもしれないが、水難事故による死者が全国で最も多いのが東京都(76人)だ。
場所別に見ると、全国で死者・行方不明者の一番多い場所は海(45.6%)、次いで川(35.3%)だが(2024年)、東京都の場合、死亡事故のほとんどは川で発生している。
東京消防庁によると、19年からの5年間で、水難による救急搬送者(281人)の発生場所の80%(225人)は川だった。死亡・重篤となった人のうち、川の割合は82%(140人)だった。
水難事故防止の啓発活動を行う河川財団によると、水難事故が多発しているのは利用者の多い都市部からのアクセスが良好な川だという。多摩川は全国で3番目に事故が多い。同財団が03~24年の報道を基にまとめた事故件数は、琵琶湖(滋賀県)147件、長良川(主に岐阜県)120件、多摩川68件だった。
「飛び込みキケン!」崖の上から続々ダイブ
奥多摩の氷川渓谷から15キロほど下流でも、水難事故がたびたび発生している。
JR青梅駅から徒歩15分の「釜の淵公園」。付近の河原にはいくつものテントが張られ、200人ほどで賑わっていた。やはりここでも目立つのは日本在住とみられる外国人の姿だった。バーベキューをする人、プレーヤーから流れる音楽に合わせて踊っている人もいる。
この場所では、多摩川はギリシャ文字の「Ω(オメガ)」のように大きく蛇行して流れている。湾曲部には水深の深い淵がある。
レジャー客で賑わう河原も大きな淵に面しており、対岸には高さ15メートルほどの岩壁がそびえ立つ。岩の上部には「警告!! 飛び込みキケン」と赤い文字で記された大きな横断幕が掲げられているが、それを無視して岩によじ登り、淵に飛び込む人が絶えない。その多くは外国人の大人だ。カメラを向けると、自慢げにポーズを決める人もいた。

母親は「子どもはダメ。死んじゃう」
小学生くらいの児童が「ぼくも飛び込みたい」と訴えると、母親らしき女性が真剣な表情で「子どもはダメ。死んじゃう」と言い聞かせていた。
もし、この場所で流されてしまうと、どうなるのか。河川財団が撮影した実験映像を見せてもらった。