
全国各地のそれぞれの職場にいる、優れた技能やノウハウを持つ人が登場する連載「職場の神様」。様々な分野で活躍する人たちの神業と仕事の極意を紹介する。AERA2025年8月4日号にはLivEQuality大家さん 代表取締役 認定NPO法人 LivEQuality HUB 代表理事 岡本拓也さんが登場した。
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子どものいる世帯の約1割に当たる母子世帯。その半数が相対的貧困だとされる。収入の不安定さなどから家を借りられないこともあり、深刻な社会問題となっている。
こうした課題を解決しようと、中古マンションを自社で確保してリノベーションし、母子世帯向けに相場の7割ほどの家賃で貸し出す。「アフォーダブルハウジング」と呼ばれる取り組みで、社会性と経済性を両立させたビジネスとして注目されている。「アフォーダブル」は「手頃な価格の」「手が届く」といった意味だ。
社会的な意義に賛同する投資家などから調達した資金で、築年数が古いが都心部の駅から近い物件を中心に購入。全部屋数のうち、一定数を対象者に貸し出す。利便性の良さから入居後の就労につながりやすいうえ、物件全体の稼働率も高くなり、収益はプラスになるという。
これまで27の母子世帯計66人が利用してきた。入居後もグループ内のNPOがコミュニティー作りや生活の支援にあたり、家賃滞納はゼロ、就業率80%を超えているという。
「自分と同年代のお母さんたちが生き生きと頑張り、次のステップに進もうとしている姿を見ると、やりがいを感じます。何より子どもたちの表情がどんどん明るくなっていくのがうれしいですね」
コロナ禍で雇用を打ち切られ、住まいを手放さざるを得なくなったシングルマザーの現状を重く受け止め、この事業を立ち上げた。「建設業を営む者として自分にできることはないか、模索し続けた結果でした。社員たちも、社長の考えならぜひやりましょう、と背中を押してくれました」
社会的に不利な立場にある人を対象としているため、リスクを懸念されることもあるというが、地方の建設業を社会的な世界観で変革することにも意義を感じている。かつて公認会計士として企業再生に携わったことで磨いたビジネスの腕と、培った人脈も助けになっている。
「今後は住まいに困難を抱えるすべての人たちを対象に事業を拡大し、全国的な市場創出を目指したい」
(ライター・浴野朝香)
※AERA 2025年8月4日号
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