
「ここまでだ」は想像できない
自分で書くときは、「力強い字で書いてやろう」と書いたりするんですけど、牛歩ですから、スローペースの「日々前進」ではあるんですが、振り返ってみると、それはそれで自分らしくて誇らしく感じられる。
それを長年見てくださっている方もいて、捨てたもんじゃないなと思います。
――今、目標としていることはあるのだろうか。
鈴木 先を見てはいますけれど、終着点は決めていないんです。役者業はいくらでも夢を探索できる職業なので。いつか、「ここまで描き切ったのだから、ここまでだ」と思うときもあるかもしれませんが、今はまったく想像できない。役者業の深さにどっぷり浸かっちゃっていますね。
演劇に「恩返し」がしたい
──6月に、40歳を迎える。
鈴木 30代になったときも、いまいちピンときていなかったのですが、20代よりは責任感が強くなって、ステップアップできたと思っています。
創作活動は続けていきたいですね。役者業はもちろん、舞台を広める活動をしていきたい。演劇に人生を変えてもらいましたから、少しでも恩返しがしたいんです。
サブスクリプションサービスで、好きなときに自宅で映画や映像作品が楽しめるようになりましたが、舞台の魅力は生の舞台でしか実感できないと思っています。体が振動するほどの音響を体感したり、演者の大きな声を直に聞いたりすることで起こる「ヒリつき」が舞台にはあります。常に緊張感のある状態で見る心地よさもあると思うんです。
舞台は一歩外に出ていただけるかどうかが難しいので、その一歩を呼びかけていきたい。舞台を見たことがない方がいたら、ぜひ劇場に連れてきていただけたらうれしいです。
(構成・ライター 小松香里)
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