
役者は深い仕事
やる気とやりがいがバランスよくあると、どんな仕事でも続けていきやすいと思います。その仕事のすべてを知っているつもりになるのではなく、もっともっと奥が深いものではという気持ちで掘り下げていくと、深みや成長が見えてくる。
そういうことをしているときはとても楽しいもので、僕にとってはこの役者という仕事が、興味の持てる深い仕事だったということになると思います。
──インタビュー中、何度も自らを「不器用」と称した。舞台で圧巻の殺陣を披露する姿からは想像しづらいが、ストイックな「努力」の人なのかもしれない。影響を受けた共演者について尋ねると、こんな答えが返ってきた。
鈴木 尊敬している方はたくさんいますが、松竹座でご一緒した山口馬木也さんには特に衝撃を受けました。時代劇的な要素が含まれている作品だったのですが、佇まいや殺陣の見せ方、ディテールの格好よさに感銘を受けました。後になって僕もよく殺陣をやらせていただくことになったのですが、すごく勉強になったと思っています。
自分以外の俳優、全員に対してうらやましく思うポイントは、さまざまあります。
言われたことをその場でできてしまう方は特にうらやましいです。過去に苦手意識を持っていた歌と踊りがうまい方にも憧れます。
けれども、うまい人たちのお芝居や歌を間近で体験させていただくからこそ、技術を参考にさせていただくことができる。そんな貴重な機会を大切にしたいと思っています。
牛歩でも進んでいく
──座右の銘はあるのだろうか。
鈴木 自分でつくった言葉ですが、いちばん自分にしっくりくる言葉が、「日々前進」です。
この世界に入ってから、ひとつも吸収できていないと感じたり、前進できずに焦ったりした時期もありました。
でも、人それぞれ学ぶスピードは違って、日に4つ5つ吸収できる人もいれば、僕みたいに不器用で1つでも吸収できればいいという人間もいるんですね。
そして、僕みたいな人間でも長く続けていれば、その一つひとつが積み重なって、たくさん勉強をして進んでこられたことになる。