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6/16(月)厚生労働省に共同声明を提出し、記者会見を行いました

- NPO法人東京都自閉症協会

6月16日(月)厚生労働省に声明文を提出
厚生労働省が6月11日に公表した「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」では、精神・発達・知的障害の障害年金不支給率が約1.9倍に急増という実態が明らかになりました。看過しがたい深刻な事態を受け、東京都自閉症協会(理事長 杉山雅治)と発達障害当事者協会(代表 新 孝彦)は、共同声明を6月16日(月)に厚生労働省へ提出しました。
精神・発達・知的障害の障害年金不支給率が約1.9倍に急増という深刻な事態 障害年金の不支給判定が急増しているという報道を受け、厚生労働省は6月11日に「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」を公表しました。報告書によると、精神・発達・知的障害の障害年金不支給率が前年度6.4%から12.1%へと約1.9倍に急増していることがわかりました。また、不支給「目安より下位等級に認定され不支給となっているケース」又は「目安が2つの等級にまたがるものについて、下位等級に認定され不支給となっているケース」の割合が75.3%となっている実態も明らかになっています。
改善と是正を求め、東京都自閉症協会×発達障害当事者協会が共同声明を発表 本来であれば支給される可能性があった方々、専門医の診断では支給相当と判断された方々の4分の3が不支給になっている現状は看過できません。この深刻な状況を受け、東京都自閉症協会は発達障害当事者協会と共同で、厚生労働省に状況の改善と、今度の是正を求め、声明文を提出しました。
 また、6月16日(月)に記者会見を実施。不支給率が倍増している背景には、現行のシステムに課題があることや、発達障害への無理解が背景にあることを訴えました。
精神・発達・知的障害のニーズを配慮した評価基準の見直しを! 報告書にある通り、内部及び外部障害は、医学的な検査数値等の客観的な指標が障害認定基準に定められているため、支給決定の公平性が保たれています。
 一方、精神・発達・知的障害については医学的な指標だけでは判断することが難しく、極めて個別性の高い社会的なハンディキャップがあります。生活上のさまざまな困難について現行の認定基準では、公平に判断できないことが、今回の異常事態の原因となっている可能性は否定できません。
 これを機に、障害年金に関して関係機関や当事者団体へのヒヤリングを進めるとともに、当事者を含めた障害年金専門の部会の開催を一日も早く求めます。発達障害当事者の実態と声を反映した制度改革を行うことで、すべての発達障害者が希望を持って生活できる社会の実現を望みます。

厚生労働省に声明を提出厚生労働省記者クラブで記者会見を実施
【共同声明】厚生労働省「障害年金認定状況調査報告書」を受けて発達障害者の生存権を脅かす深刻な実態の改善を緊急に求めます 令和7年6月11日に厚生労働省が公表した「令和6年度の障害年金の認定状況についての調査報告書」のサンプル調査により、23年度に比して24年度は内部障害・外部障害の不支給割合はほぼ横ばいなのに対し、精神・発達・知的障害の障害年金不支給率が前年度6.4%から12.1%へと約1.9倍に急激に悪化した深刻な実態が明らかになりました。私たち発達障害当事者・家族は、この事態を重く受け止め、政府に対して緊急の改善を求めます。
精神障害・発達障害・知的障害に偏って不支給が急増した原因の説明を求めます わずか1年で精神・発達・知的障害に限って不支給率が約1.9倍になるという異常事態には、必ず明確な原因があるはずです。なぜこのような急激な変化が起きたのか、詳細な説明と原因についての見解の報告及び再発防止策を求めます。
ボーダーケースの75%が不支給という異常な状況 報告書によると、不支給となった85件中64件(75.3%)が「(支給とされる)ガイドライン目安より厳格判定」によるものです。本来であれば支給される可能性があった方々、専門医の診断では支給相当と判断された方々の4分の3が不支給になっている現状は看過できません。 行政判断の基本原則である「疑わしきは市民 の利益に」を貫き、ボーダーケースでは支給方向で判断する原則の確立を求めます。特に生存に関わる社会保障制度では、この原則がより重要になります。
不支給時の理由説明を異議申し立て可能な内容に 報告書にもあるように、理由付記文書が「申請者にとって分かりにくい記載」で行政手続法第8条・第14条及び最高裁判例が求める水準を満たしておらず、事実上異議申し立てが不可能になっているケースがあり、不支給の場合はその理由の開示が異議申し立て可能な程度に具体的であることを求めます。
就労=困難解消という重大な誤解の是正を 報告書に「週4日飲食店で援助なくバイトしており、通勤も⽚道1時間できている」として不利益判定を受けた事例が記載されていますが、発達障害への根本的な無理解があります。 発達障害者の就労継続には、健常者の何倍もの精神的エネルギーが必要です。感覚過敏による苦痛、コミュニケーションの困難、実行機能障害など、見えない困難との毎日の闘いがあります。働いているからこそ、より多くの支援が必要な場合が多いのです。
就労の「質」を詳しく評価し、就労以外の生活への影響を考慮し、持続可能性を重視した適切な評価基準の策定を求めます。
時代遅れの認定基準を現代に合わせた改定を 現在の障害年金認定基準である国民年金法施行令別表の1級9号・2級15号包括条項は、1959年に制定された古い基準です。「働く」か「働けない」かの⼆者択一的な発想で、現代の多様な働き方に全く対応していません。
私たち発達障害者が求めているのは、心身の状態に合わせた無理のない働き方と、不足分を年金で補う安心できる生活設計です。部分的就労を前提とした認定基準、持続可能性を重視した評価、生活の質を考慮した基準、多様な働き方に対応した基準への抜本的改定を求めます。
法的・国際的義務の遵守を 障害者基本法第2条は障害者を「障害及び社会的障壁により継続的に日常生活⼜は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」と定義していますが、現在の認定基準は「社会的障壁」の視点が完全に⽋如し、機能障害のみを重視する医学モデルに偏重しています。 また、2022年10月の国連障害者権利委員会総括所見では「社会モデルに基づく制度設計が必要」とされています。国内法と国際法の両方の義務を果たすため、特に精神・発達・知的の各障害については医学モデルのみならず社会モデルを取り入れた認定基準への転換を求めます。
当事者を含めた専門部会の早期開催及び当事者団体へのヒアリング これらの様々な問題を解決するために、既に厚生労働大⾂が国会答弁で検討を表明したところの当事者を含めた障害年金専門の部会の開催を一日も早く求めます。 また、専門部会の開催のみならず、障害年金に関する当事者団体へのヒアリングを行い、発達障害当事者の実態と声を反映した制度改革を行うことで、すべての発達障害者が希望を持って生活できる社会の実現を望みます。

東京都自閉症協会
 ・代表者名 杉山雅治
 ・所在地 〒170-0005 東京都豊島区南大塚3丁目43−11 福祉財団ビル 7F
 ・公式HP https://autism.jp/
 ・主な活動 自閉スペクトラム症と家族、まわりの人たちが幸せに暮らせる世の中をめざす。 

◆発達障害当事者協会
 ・代表者名 新 孝彦
 ・所在地 東京都新宿区西早稲田2-18-21羽柴ビル202
 ・公式HP https://jdda.or.jp/
 ・主な活動 当事者の「声」を集め共生社会づくりをともに考える。
                           

                                以上    

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