
文学作品展示即売会「文学フリマ」が大人気だ。5月11日に東京ビッグサイトで開かれた文学フリマ東京40では、過去最高の2700店以上が出店、来場者は1万人以上。会場には、さまざまなジャンルの手作り本「ZINE」が並んだ。ZINEブームの背景には何があるのか。AERA 2025年6月9日号より。





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文学フリマがスタートしたのは、2002年。きっかけは評論家の大塚英志さんが書いた「不良債権としての『文学』」というエッセイだった。大塚さんはその中で、文学が生き延びていくための手段のひとつとして、既存の流通の外側にもうひとつ文学を売る場を作ることを提案し、実際に第1回を開催した。
「それが、『自分が文学と信じるものなら何でも出店できる』即売会、文学フリマです」
そう話すのは、大学時代、第1回文学フリマへ出店者として参加、今は同事務局の代表を務める望月倫彦さんだ。第1回で約80だった出店数は、今ではその約30倍以上に。
自分の考え赤裸々に
「本の売り上げは減っていても、スマホで簡単に読み書きができるようになるなど、文字そのものはかえって浸透している面もあります。またアナログなイベントの場でなら、自分の考えを赤裸々に発表できると考えている人も多い。そんな時代の傾向が、出店を増やしている理由のひとつかもしれません」(望月さん)
21年からZINEの世界では、その名も「ZINEフェス」という新たなイベントも拡大している。主宰者の中西功さんは、シェア型書店「ブックマンション」なども運営。そこで店番をしていたときに、美大生の客から、ZINEなるものを見せられたのが始まりだった。
「イベント名にZINEと名づけたのは、英語圏の人にも知ってほしかったから。実際、在住の方を中心に、外国人の出店者も増えていますね」(中西さん)
中西さんの考えるブームの背景は二つ。ひとつは、本が手軽に作れるようになったこと。そしてもうひとつが、コミュニケーションツールとしての、ZINEの重要性だ。
「SNSで何かを公開しても、誰かは見ているのはわかっても、その感想を書いてくれる人は今や少ない。ZINEを介したリアルなコミュニケーションで、新たな関係性が築かれている感覚はありますね」(中西さん)
(ライター・福光恵)
※AERA 2025年6月9日号より抜粋
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