MOMO
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ベス単を解析して設計したソフトフォーカスレンズ

 通称「ベス単」と聞いて、ピンとくる人はソフトフォーカス写真の好きな人だと思うが、1912年に登場した当時としては小型のハンディカメラ、ベスト・コダック・ポケットカメラに搭載されたレンズだ。

 知られているのはレンズについていた絞り兼用のフードを外すと、球面収差による大きなソフトフォーカス効果を得ることができること。これを「ベス単フードはずし」として、ソフト効果を作画に応用する試みは古くから行われている技法である。自作のアダプターやヘリコイドを使用しデジタルカメラに装着し独自の味わいを楽しんでいる人も多い。

 安原製作所から登場したこのMOMOはレンズ構成を1群2枚とした現代版のベス単レンズ。マイクロフォーサーズ、ソニーEマウント用互換のタイプは焦点距離28ミリ、ニコンF、キヤノンEF用の焦点距離は43ミリ。開放F値は双方ともF6.4とオリジナルをリスペクトした仕様である。ヘリコイドを内蔵、オリジナルにはないフォーカシングを可能としているのが特徴だ。ソフトフォーカスはデジタル処理として、エフェクトや画像処理ソフトでも行うことができるが、レンズ本来の持つ特性や味わいとは異なることがわかる。

絞り開放、至近距離で最大のソフト効果を狙った。バラの輪郭のにじみは個性的。順光や逆光、被写体の色や背景の違いでも効果は変化。また、背景はぐるぐると回るようなボケだ●EOS5D MarkIII・AE(絞りf6.4・3200分の1秒・-0.7補正・ISO400・AWB・RAW)
絞り開放、至近距離で最大のソフト効果を狙った。バラの輪郭のにじみは個性的。順光や逆光、被写体の色や背景の違いでも効果は変化。また、背景はぐるぐると回るようなボケだ●EOS5D MarkIII・AE(絞りf6.4・3200分の1秒・-0.7補正・ISO400・AWB・RAW)

デザイン
パンケーキタイプで美しい。絞りはf6.4(●)・f8・f11・f16・f22(■)。●印の位置がソフト効果最大で、中央のラインの指標は絞り位置指標。鏡胴左側面の●と■が距離位置指標になる

使用感・操作感
フォーカシングはライブビューで像を拡大したほうがいい。絞りによる焦点移動があるから絞りを設定した後にフォーカシングを行う必要がある。ソフト写真でもフォーカシングは正確に行う必要がある

描写性
コントラストは低いが合焦位置には明確な芯があり、ハイライト部分や被写体の輪郭がボケるのが本レンズの特性。球面収差を応用したソフト効果で光線状態や撮影距離でも変化は出る

◆赤城耕一

●焦点距離・F値:マイクロフォーサーズ、ソニーE:28ミリ・F6.4(ソフトフォーカス撮影時)、キヤノンEF、ニコンF:43ミリ・F6.4(ソフトフォーカス撮影時)●レンズ構成:1群2枚+保護ガラス●フィルター径:37ミリ●マウント:マイクロフォーサーズ、ソニーE、キヤノンEF、ニコンF●大きさ・重さ:61×35ミリ・約126グラム(マイクロフォーサーズ)、61×36ミリ・約139グラム(ソニーE)、65×28ミリ・約145グラム(キヤノンEF)、61×26ミリ・約123グラム(ニコンF)●価格:2万1000円(実売価格同じ)●URL:http://www.yasuhara.co.jp/