占い師、作家 しいたけ.
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 AERAの連載「午後3時のしいたけ.相談室」では、話題の占い師であり作家のしいたけ.さんが読者からの相談に回答。しいたけ.さんの独特な語り口でアドバイスをお届けします。

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Q:悩みというほどでもないんですが、夫婦の間で距離感の違いを感じることがあります。例えば休日に下北沢まで自転車で一緒に行こう、となったときに、自転車の15分を近いと見るか遠いと見るか、みたいなことなんですが。私は北海道出身で、基本どこに行くのも遠い環境で育ったからなのかな、とも思います。妻は都会出身です。そういうことってありませんか?(男性/会社員/52歳/やぎ座)

A:こういうお悩み未満の雑談も、たまにはいいですね。せっかくなので今回は雑談の回にしちゃいましょう。

 夫婦関係だけの話ではないですが、誰かと親密になったり一緒に生活をしたりしていく時には、「ルールの上書き」が発生します。

 例えば2食続けてカレーを食べられる人って、この世にたくさんいると思うんです。朝昼カレーでもOKな人。でもそのルールは、誰かと一緒に生活するようになると、許されなくなります。カレーはおいしいけれども2食続けてはちょっと、って。

 1人の時にはできていたことが、誰かとの共同生活になると、できなくなる。でも相手が出張に行ったりした時だけは、2食連続カレーが復活できる。初めはルールの変更を不満に思うけど、でもそのために頑張れたりもするから、自分だけが味わえる幸せの原点という意味で、元のルールも大事にとっておきましょう。

 北海道のご出身ということで、思い出した記憶があります。北海道の田舎のほうに旅行に行ったときの、夕方の駅の待合室の光景です。鹿が線路に飛び出してぶつかったらしくて、電車が遅れていたんですが、駅の待合室では、お年寄りから若い学生さんまで、しーんと皆さんが待っていました。

 僕はその風景に、神聖さを感じました。大げさでなく、どこかの教会に迷い込んだような感覚。待つことが生活の一部になっている人たちの強さに、畏敬の念を抱きました。

 普段、僕も含めて都会にいる人の「待つ」モードにはイライラが含まれます。3分以上待たされたら、つい「なんだ早くしろよ」と思ってしまう。便利なのが当たり前と思ってしまう自分がいて、忍耐力が減って不安定さが増えてしまうから、たまにあの風景を思い出すようにしています。

 やぎ座も、どこか神聖さを持ち合わせている星座です。自然の中から、鹿がじっと一点を見つめているみたいなイメージ。「あなたどうしてそんなことしてるの?」と周りの人にとっては不可解な行為でも、本人にとっては普通の行為だったりします。

 人間界の中での生活をずっと続けて、意味不明なことをやれる時間がなくなると苦しくなってくる人でもあるから、自然に戻る時間を取ったり、それこそ自転車で15分以上走り回ったりする時間も大切にしてくださいね。

AERA 2025年5月5日-5月12日合併号

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