第10期叡王戦挑戦者決定戦で初手を指す斎藤慎太郎八段=2025年3月18日、東京都渋谷区の将棋会館
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 注目対局や将棋界の動向について紹介する「今週の一局 ニュースな将棋」。専門的な視点から解説します。AERA2025年5月5日-5月12日合併号より。

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 4月19日、石川県加賀市において、第10期叡王戦五番勝負第2局・伊藤匠叡王-斎藤慎太郎八段戦がおこなわれ、120手で伊藤が勝利。シリーズ成績を1勝1敗の五分とした。

伊藤「本局は相掛かりから中盤、少しペースを握ったような気もしつつ。ただ進んでみるとあまり具体的な順がわからなくて。本当によかったのかどうかと疑心暗鬼になったりもしていたんですけど」

 勝敗不明の最終盤で、斎藤が受けに銀を上がった手がわずかに疑問。伊藤は的確に攻めて勝ちきった。

伊藤「最後、秒読みになってから、少し自信のない局面もあったんですけど。なんとか粘り強く指すことができたのかなと思います」

斎藤「自分の中では(銀上がりは)あまり指したくなかった手だったので。ちょっと瞬発力がなかったなというふうに思います」

 伊藤は現在22歳。よく知られているように、王者・藤井聡太七冠は同い年だ。タイトル戦で藤井を降した棋士は、いまのところ伊藤しかいない。現棋界の序列は1位が藤井で、2位が伊藤だ。

 斎藤は2018年、25歳のときに初タイトルの王座を獲得した。今年4月21日に誕生日を迎えたばかりで、現在は32歳。棋士にとっては「指し盛り」ともいえる年代だ。

 2022年半ばから約2年半ほどの間、タイトル戦は藤井聡太七冠が出ずっぱりだった。そして今シリーズは、久々に藤井のいない番勝負となっている。

 開幕前、「藤井七冠が出てないと盛り上がらないのでは?」という声も一部で聞かれたが、もちろんそんなことはなかった。

 現代トップクラスの伊藤と斎藤はファンの期待に違わず、ハイレベルな好勝負を繰り広げている。5月4日におこなわれる第3局も熱戦を期待したい。(ライター・松本博文)

AERA 2025年5月5日-5月12日合併号

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