今国会で答弁する植田和男・日銀総裁(中央左)
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 先週に多く読まれた記事の「見逃し配信」です。ぜひ御覧ください(この記事は「AERA DIGITAL」で2025年4月22日に配信した内容の再配信です。肩書や情報などは当時のまま)。

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 トランプ関税に右往左往する金融市場。こうした状況下ではどういったスタンスで資産運用に取り組めばいいのか。

 もはやディール(取引)の域を超えて「脅迫外交」とも揶揄されるトランプ大統領の関税政策に、金融市場がすっかり翻弄されている。短期間でここまで激しく乱高下する状況は、過去を振り返ってもほとんど例を見ないだろう。その行方は日本経済にも深刻な影響を及ぼし、日本銀行の金融政策も左右する。

 昨年3月、日銀はマイナス金利政策を解除し、久々に利上げを実施。さらに7月と今年1月にも追加利上げに踏み切った結果、政策金利(短期金利誘導目標)は昨年3月の5倍の水準に達した。それに伴い、民間の金融機関が預貯金に適用する金利も上昇。ようやく、「いくら預けても利息はゼロ同然」という冬の時代が終わりを告げた。

 物価高に苦しみながらもどうにか資産を増やそうと考えている我々庶民にとっても、気になるのは今後の金融政策の行方だ。トランプ大統領による「相互関税」が発動された4月9日、日銀の植田和男総裁は衆院財務金融委員会でこう答弁している。

「経済・物価情勢が改善するもとで低金利を継続すると、金融緩和の度合いが過大なものとなる恐れがある」

 発動の同日、トランプ大統領は朝令暮改で「相互関税」の90日間停止を発表。それが奏功し、金融市場の動揺はいったん収まったものの、依然として先行きは不透明だ。「相互関税」がさらなるインフレや景気後退を招くことも懸念されており、「経済・物価情勢が改善」という日銀の大前提が崩れかねない。

来春には金利が倍に

 果たして、こうした状況下でも追加利上げは敢行されるだろうか? 次回の日銀金融政策決定会合は4月30日~5月1日に予定されているが、第一生命経済研究所主席エコノミストの藤代宏一さんはこう推察する。

「5月1日の利上げ決定は遠のいたと判断される。金融市場が荒れている状況での利上げは、株価下落に拍車をかける可能性が高く、常識的に考えればあり得ない選択だろう。日銀は、政策判断にあたり通商政策の不確実性を注視すると何度も言及してきた経緯があるので、この段階で動く可能性はゼロに近い」

 もっとも、金融市場の動向が安定してくれば、7月の同会合(7月30~31日)での追加利上げ決定も十分にありうると藤代さんは捉えている。

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