大阪ではめっぽう強いものの、「地域政党」の性格が強いと思われていた日本維新の会。だが、今回の統一地方選で奈良県知事選を勝ち取るなど、全国政党化の道を着々と固めつつある。他の野党を出し抜き、政界の勢力図を激変させるのか──。
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「確かな改革を地方から真面目にやれば自民党と対峙できる。今の立憲民主党や共産党に自民党はビビっていない。(維新は)自民がビビるような政党に育っていく」
日本維新の会の共同代表を務める吉村洋文大阪府知事は、4月10日の就任会見で強気に宣言した。背景にあるのは、9日に行われた統一地方選前半戦での「戦果」だ。地域政党・大阪維新の会は大阪でのダブル選(知事選、市長選)勝利に加え、府議会、市議会で過半数を獲得する「完全試合」(維新関係者)を達成した。
今回特筆すべきは、奈良県知事選も制して大阪以外では初となる公認県知事を誕生させたこと。兵庫、京都、奈良の各府県議選などでも議席を大幅に増やし、首都圏でも神奈川県議選で6議席を獲得。道府県議選の当選者は改選前の57人から124人へと倍増し、「全国政党進出の足場作りができたかたち」(同)となった。
政治ジャーナリストの角谷浩一氏はこう話す。
「国会運営や政策面で与党のように見せたり、野党のように見せたりと、立ち位置のとり方がうまい。すべてが中途半端な立憲民主党の票を奪い、さらに、自民に不満を持つ保守層の票も取ったことが議席増につながった」
勢いづく維新に自民側も警戒感を強めている。政府関係者がこう語る。
「高学歴の元官僚や海外留学経験者といった“キラキラ”の経歴を持つ新人は、かつては旧民主党に集まったが、今はそうした人材が維新に流れる。すぐさま脅威とならなくても、2009年に旧民主党が政権を奪取する数年前のような雰囲気、勢いを維新に感じている自民関係者は多いはずだ」
自民は道府県議選で全体の過半数を得て「面目を保った」(党選対幹部)が、「外形的に衆院解散を打てる条件は整ったが、維新は脅威だ」(同)との声も漏れ聞こえる。