元朝日新聞記者 稲垣えみ子
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 元朝日新聞記者でアフロヘアーがトレードマークの稲垣えみ子さんが「AERA」で連載する「アフロ画報」をお届けします。50歳を過ぎ、思い切って早期退職。新たな生活へと飛び出した日々に起こる出来事から、人とのふれあい、思い出などをつづります。

【写真】世界は信じられないほどの差に満ちているが、子どもたちはめちゃくちゃ元気!

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 さて、なぜ今回ルワンダに行ったのかといえば、とある国際支援団体の現場視察ツアーに参加したのである。個人的にあれこれ思うところがあり数年前から複数のNPOへ寄付活動を始め、この団体もその一つなのだ。

 ただ旅の目的が、地方の支援対象地域をあちこち回ることなので、いつもの一人旅とは違い料金もそれなりに高額である。そのお金を寄付に回した方が良いのではと迷いもしたが、ちゃんと現場を見て使い道を知っておくのも寄付者の責任ではと思うに至った。

 何しろ改めて考えてみれば私、現場のことなど本当にナーンにも知らないのだ。

 この団体では支援地域の子供と手紙のやり取りができる仕組みになっていて、寄付を始めてから、アジアやアフリカや中南米の見知らぬ国の見知らぬ子供から東京の我が家のポストに手紙が舞い込むようになった。みんな自分の暮らす場所の紹介をしてくれるんだが、これがどれも大体同じことが書いてある。「森があって山があって川があって……」。なるほど自然がいっぱいなのだね。素晴らしい。

ルワンダのお子達はめちゃくちゃ元気だった(写真:本人提供)

 だがしかし、これにどんな返事を書いたら良いのだろう。自然がいっぱいって良いことだが、だからこそ支援を必要としている気もする。ならば「それは素敵!」などと無責任に答えて良いものか。さらに、お返しに自分の住む場所の紹介をするとして、「東京は人が多くてビルやコンビニがたくさんあって皆スマホばかり見ています」などと書いた場合、相手はどう思うだろう。自慢気に思われやしないか。あるいはそうでもないのだろうか。っていうか、そもそも私自身はそこを自慢したいわけじゃない。でもこんなマネー社会で暮らしているからこそ寄付するお金を稼げるわけで……などと考えていると、もう本当に何を書いていいのやらさっぱりわからない。我らには共通認識というものがこれっぽっちもないように思えてくる。それほどまでに世界は分断され、信じられないほどの差に満ちている。だからこそ「行くしかない」。そう思ったわけです。

AERA 2025年4月14日号

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