
トランプ政権による「相互関税」の影響で、世界経済を後退させるリスクが高まる懸念が強まっている。3日の東京市場では日経平均株価が989円安となり、節目の3万5000円を下抜け。さらに翌4日には一時1400円安を記録。週明けの7日は一時3000円近くの下落幅となっている。こんな時にこそ読み返したい記事を振り返る。(この記事は「AERA dot.」に2025年3月11日に掲載した記事の再配信です。年齢や肩書などは当時のもの)
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2月13日に発売された『楽天証券社長と行動ファイナンスの教授が「間違いない資産づくり」を真剣に考えた』に、これから投資を始める人にとって役立つ客観的データが多く載っている。本記事では著者および版元の許可を得たうえで、著者に追加取材しつつ内容の一部を抜粋して紹介する。【前後編の後編】
2024年1月に新NISAがはじまり、8月に一時下落があったものの基本的には右肩上がり。特に米国株メインの投資信託を積み立てている人のほとんどが「損をしていない」状況だ。
ただ、相場には山も谷もある。新NISA初心者が初めて本格的な暴落を経験したら? 実はリスク許容度を超えた投資をしていた場合、逃げたくなる(投げ出して全部売る)かもしれない。
『楽天証券社長と行動ファイナンスの教授が「間違いない資産づくり」を真剣に考えた』の中では「パニック売り」をテーマにした章がある。
共著者の一人、広島大学大学院の角谷快彦教授に話を聞いた。角谷教授は行動ファイナンスと医療経済学が専門で、データ分析のプロだ。
パニック売り→長期投資失敗
まず「パニック売り」とは? 雰囲気はわかるが、改めて定義していただこう。
「株価急落時に、さらなる下落の恐怖から、投資家が株や投資信託などのすべて、または一部を売ってしまう行為を指します」
「どこまで下がるのか!? とりあえず投げてしまおう」と慌てて売却。いわゆる「狼狽売り」である。これ以上損したくない、という気持ちが根底にある。
パニック売りをしてしまうと、いったん市場を離れることになるわけで、再び投資を始めにくくなる傾向があるという。その結果、長期投資に失敗しやすい。
行動ファイナンスの世界では「ヒューリスティック」(問題解決や意思決定の際に使われる経験則や直感的な方法)によってもたらされる、非合理的な行動とされている。
非合理的だから、自分はそんなことしない……と思っていても、いざそのときになると、わからないものである。実際に本物の暴落を体験するまでは。