AERA 2025年4月7日号より

「どうなるのかわからない展開が多い」というのも魅力でした。点と点が繋がるタイミングも登場人物によって一人ひとり異なり、そのズレた感じもすごく面白い。

 登場人物それぞれの点と点が繋がったとき、この展開はどこに落ち着くのか、最後まで見逃せないなと思いましたし、そう感じている時点で自分がこの作品のファンになっている、と言えるかもしれません。僕たちがどう演じるかは、物語を繋げていくうえですごく大切なところで、視聴者の目にチグハグに映ったり、ミスリードに見えてしまったりしないよう、繊細さが必要とされるな、とも感じています。

忙しさは関係ない

――「物語や僕が演じる役柄について、多くは語れないんです」。もどかしそうに、そう何度も口にした。申し訳なさそうにするその表情に、阿部の人柄がにじみ出る。自身も初めて出会うような、一筋縄ではいかない役柄のようだ。

阿部:物語の序盤、家庭教師として登場するときは誠実な人間として描かれていて、そうしたキャラクターはどちらかというと自分に近いところがあるのかもしれません。ただ、物語が進行すると、それまでとは人物像が変わっていく。時系列が進むにつれ、新たな展開が待っていて、玖村の芯のようなものもブレていくんです。台本を最初に読んだ時は「芯がないな」とも感じたのですが、同時に「これだけのことがあったら、こうなってしまうかな」と考えさせられるような事件も起こっていて、次第に玖村の“人間らしい部分”が表に出てくるようになる。

 観ている方々をちょっとイラッとさせる役、という表現が正しいのかはわかりませんが、玖村の心の揺れ具合みたいなものをうまく表現できたらいいな、と思っています。

(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2025年4月7日号より抜粋

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