内側から発光するように輝いていた。鏡越しに撮影するカメラマンは何度も「美しい」とつぶやいた(写真/門間新弥)
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 ヘア&メイクアップアーティスト・小田切ヒロ。メイクと人生はつながっている。小田切ヒロのメイク動画にハマると、その言葉の意味がよくわかる。自身の経験に基づいた技術と語りはロジカルだ。一方、取材時に子ども時代を話してくれたとき、何度も涙声になった。マイナスの感情はぜんぶ原動力にしますから、と言う。自分の力で生き抜いてきた人の言葉は強い。

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「まぶたには人間が持ってるシェード、影色があるんですけど、完全に消してしまうと個性を失ってしまうんですね。その影すらも自分の魅力として残していく。つまり、くすみは味方になる。くすみや影がいっぱいある人こそたくさん光り輝くってことなの。見て? わかりますでしょ」

 目元のファンデーションの塗り方を指導しながらカメラに向かってそう語った次の瞬間、「すぅ~ごいでしょう!? そうよ~(ハートマーク)」とおどけ、芸人さながらの顔芸でクルクルと踊り始めた。

 人気ヘア&メイクアップアーティスト、小田切(おだぎり)ヒロ(43)のYouTubeチャンネル「HIRO BEAUTY CHANNEL」での一コマだ。クセの強いキャラと確かなメイク技術が視聴者の心をつかみ、登録者数は140万人(2025年3月時点)。動画で紹介したコスメを購入する行為は「#ヒロ買い」と呼ばれ、品切れになることも珍しくない。今、ビューティー界隈で圧倒的な影響力を持つ。

 冒頭のような小田切が発する言葉は、メイクのみならず、人生に迷う視聴者も引き寄せる。お悩み相談やQ&A動画も人気で、コメント欄には熱い思いが長文で多数寄せられる。なぜ、彼の言葉には心を動かす力が宿っているのだろう。

「HIRO BEAUTY CHANNEL」のプロデューサー、株式会社chicableの飯嶋和樹(29)は言う。

「どの動画も台本はないので、すべて小田切さんの中から出てくる言葉ですが、ご自身の経験に基づいたことしか言わないので、言葉が“本物”という感じが伝わるんじゃないでしょうか」

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