ジャーナリストの田原総一朗さんは、トランプ前大統領が支持されている理由を解説する。
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3月30日、米国のトランプ前大統領が起訴された。2016年の大統領選挙期間中に、不倫関係にあったとされる女性に口止め料を支払ったことに関連したもので、女性にお金を渡した当時の顧問弁護士であるマイケル・コーエン氏は、選挙資金法違反などで禁錮3年の実刑が5年前に確定している。
トランプ氏は合わせて34件の罪に問われていて、すべての罪が有罪となった場合は、最大で禁錮136年の刑になるようだ。ほかにも20年の大統領選をめぐりジョージア州の選挙結果を覆そうと州当局に圧力をかけたとされる疑惑、21年1月に連邦議会議事堂が襲撃された事件など、重罪が予想される事件が少なくない。
それに対して、トランプ氏は4月4日にフロリダ州の自宅前で約25分間の演説を行った。
今回の起訴について、「米国でこんなことが起きるとは思ってもみなかった」「この事件を見た誰もが犯罪はなかったと言っている。起訴されるべきではなかった」「過激な左翼が法執行機関を利用して、選挙を妨害しようとしている。そんなことはさせない」などと、怒りをぶちまけた。
トランプ氏は次期大統領選への出馬を表明しているが、この日に米国のデータ調査会社が行った支持率調査によれば、トランプ氏は共和党支持者からの支持率を大きく上昇させ50%を超えているのである。起訴されながら、である。
日本ならば、起訴されれば当然支持率は大きく下落し、国のトップへの出馬などあきらめざるを得なくなるはずだ。トランプ氏の支持率が上昇するとはどういうことなのか。
トランプ氏は16年の大統領選に出馬するときに、それまでのどの大統領も、大統領候補も絶対に口にしなかったことを公然と宣言した。「世界のことはどうでもよい。米国さえよければよいことをやり抜く」と。この宣言が多くの国民に支持されて、トランプ氏は大統領の座を手にしたのである。