
作詞家、ラジオパーソナリティー、コラムニストとして活躍するジェーン・スーさんによるAERA連載「ジェーン・スーの先日、お目に掛かりまして」をお届けします。
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先々週号から始まった私の花粉症物語2025、あれから悪化の一途をたどり、アレグラを朝晩飲んで点鼻薬を使っても、くしゃみ鼻水鼻づまりが取れないひどい状態になっております。つらい!
そんな中、私はやり切りました。堀井美香さんと一緒にやっている無駄話ばかりのポッドキャスト番組、OVER THE SUNの武道館公演を! 雨のなかご来場いただいた皆さま、配信で観てくださった皆さま、本当にありがとうございました。
アーティストが初めての武道館公演を行った時、ファンに向かって「ここまで連れてきてくれてありがとう!」といった内容のMCをすることがあります。私もそんな気持ちになるのかと思っていたけれど、湧き起こった感情から発した言葉は「私たち、すごくない? やったわね!」でした。
ここで言う「私たち」は、番組パートナー堀井美香さんと私のことだけではありません。リスナーである互助会員さんたちも一緒。横一列に並んで手をつなぎ、みんなでゴールテープを切ったような爽快感がありました。

特に芸のない堀井さんと私ですから、内容はお楽しみ会の域を出ておりません。それでも楽しんでいただけたのは、オーケストラによる素敵な演奏、ゲストで出演してくださった秋川雅史さん、紙切り名人の林家二楽さんと八楽さん、ギター奏者の木村眞一朗さんのお力を借りたから。そして、誰かに揶揄されたり眉をひそめられたりすることなく安心できる状態で、お互いを受容しあえる安全な空間を作ることができたから。中年女性がはしゃいでも、大きな声で歌っても、誰にも冷やかされない素敵な時間は、堀井さんと私だけでは作り得ませんでした。みんなでその場所を育めたことが、私はとても誇らしいのです。
携わるスタッフの数も、内部外部ともに並々ならぬものでした。AERAとコラボして作っていただいたムック本を筆頭に、関わってくれたみなさんが、互助会員さんたちを歓迎し受容する態度を隅々まで表現してくれました。喜んでもらえた最大の理由はこれだと確信しています。人をもてなす術を教えてもらったのは、私にとっての財産です。
いまは花粉で鼻ズビズビのひどい顔をしているけれど、あの日のことを思い出せば、なんとか頑張れる。また、みんなではしゃぎましょう!
※AERA 2025年3月31日号

