
AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。
【写真】「冒険に挑戦したい」と考える、あらゆる世代の人を勇気づける一冊
元朝日新聞の記者が定年後、バルセロナで豆腐店を開業した。豆腐店での修業の日々、異国での苦労、思わぬ人々との出会いと交流、ヨーロッパから見た日本の姿──著者である清水建宇さんはジャーナリストならではの洞察力で、身に起こる出来事を見て、考える。シニアのみならず、「冒険に挑戦したい」と考える、あらゆる世代の人を勇気づける本となった『バルセロナで豆腐屋になった 定年後の「一身二生」奮闘記』。清田さんに同書にかける思いを聞いた。
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『バルセロナで豆腐屋になった』の著者・清水建宇さん(77)は、朝日新聞社を定年後、妻と二人でバルセロナに移住し、豆腐屋を始めた。海外で暮らした経験はゼロ。豆腐や厚揚げは大好物だが、作ったことはない。なぜ大きな決断ができたのだろうか。
「記者時代に訪れた海外の都市で、一番気に入ったのがバルセロナでした。街は美術館のように美しく、食べ物が安くて美味しい。アジア人であっても奇異の目で見ない街は他にありませんでした。妻と一緒に旅行したとき『この街なら住んでもいい』と言ってくれ、40歳頃から移住を考えはじめたんです」
住みたいと思ったバルセロナだが、アジア系の食材屋に行くと、日本の豆腐が売っていない。
「移住となれば何年も暮らすのに、豆腐が食べられないなんてありえません。だったら自分が豆腐屋になろうと思った。カミさんも売り場を担当することに同意してくれたんですよ。彼女の協力がなかったら豆腐屋はできませんでした」
定年後、清水さんは豆腐屋に修業に行き、製造に使う機械を購入、輸出入の段取りをつける。就労ビザを得るためにスペインで会社を設立するが、必要な手続きが次々と出てくる。煩雑な事務手続きなどの出来事がテンポの良い文章で語られる。