「2023年の顔」を週刊朝日が徹底リサーチした。今回はその中から、建築家の能作文徳さんに話を聞いた。
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「生態系と建築デザインの関係について研究しています。まだ日本ではなじみがないかもしれませんが、世界で大きな関心を集めつつあります」
そう話すのは東京都立大学都市環境学部准教授の能作文徳さん(40)だ。
能作さんが設計した住宅は、斬新な発想で環境負荷を小さくしている。
通常のように地面全体をコンクリートの基礎で覆わず、日本の寺社建築などに見られる石の上に柱をのせる「石場建て工法」を応用した鉄板の独立基礎を採用。壁は藁のブロックを積み上げ土塗りにした。現在のテクノロジーと昔から受け継がれる伝統知を融合させた。
「鉄はリサイクルできますし、藁も自然素材です。何より床下がコンクリートで覆われていないので土中環境も健全です」
この考えに至ったのにはいくつかの経緯がある。2018年、土の中の環境が建築はもとより、さまざまな生態系に影響を与えることを説いた『土中環境』の著者・高田宏臣さんと出会い、また別の日、伝統工法を続ける棟梁に伝統的建築について聞き、そのうえで建築について自らも学ぶことで、これらの知が結集していったのだ。