安田顕(撮影/張溢文)
安田顕(撮影/張溢文)
この記事の写真をすべて見る
映画「ホテルローヤル」は、13日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開/(c)桜木紫乃/集英社 (c)2020映画「ホテルローヤル」製作委員会
映画「ホテルローヤル」は、13日からTOHOシネマズ日比谷ほか全国公開/(c)桜木紫乃/集英社 (c)2020映画「ホテルローヤル」製作委員会

 10日放送の「鶴瓶の家族に乾杯」(NHK総合・午後7時57分)は、大河ドラマ「べらぼう」で平賀源内を演じる俳優の安田顕が宮城県名取市でぶっつけ本番旅をする。どんな出会いが待ち受けているのか? そんな安田顕の過去の人気記事を振り返る(「AERA dot.」2020年11月14日配信の記事を再編集したものです。本文中の年齢等は配信当時)。

【映画「ホテルローヤル」の場面写真はこちら】

*  *  *

 スタジオに現れた安田顕さんは、撮影が始まるまで、ずっと楽しそうに周囲のスタッフと談笑していた。フォトグラファーが、「そこに立って、キリッとした表情でカメラを見てください」と言うと、「はい」と答え、カメラを見た瞬間に、辺りの空気が一変する。求められるものに即応じることができるのは、役者の優れた才能の一つだ。ほんの数分の出来事なのに、多くのクリエーターが「一緒に仕事をしたい」と切望する旬な役者の能力に触れた気がした。

 映画「ホテルローヤル」で、安田さんは波瑠さん演じる主人公・雅代の父・大吉を演じた。

「私は、波瑠さんの父親で、ラブホテルの経営者ですが、途中で、夏川結衣さん演じる妻・るり子に逃げられてしまう。登場する人物それぞれに抱えている荷物があって、ホテルの部屋ではその荷物を下ろし、見た目じゃなく心を裸にしていく。そういう映画です。人の秘密を覗き見している割には、意外とカラッとしていて、そこがいいんですよ(笑)」

「登場人物全員が、情けないけど愛おしいですね」と言うと、「ああ、嬉しいなあ。それはすごくいい言葉ですね」と言って微笑んだ。

「見終わったときに、一歩踏み出すときの背中を押してくれるような、そんな映画になればいいな、と。私は北海道の人間なので、北海道の情景も楽しんでいただきたいと思います」

 新型コロナの影響で、4月にスタートするはずだった連続ドラマが、来年度のスタートに変更になったりしながら、緊急事態宣言が明けた7月からは主演舞台「ボーイズ・イン・ザ・バンド~真夜中のパーティー~」で全国を回った。

「試練が立ちはだかったとき、火事場の馬鹿力のようなものは湧きましたか?」と質問すると、「自粛期間中は、自分の弱さに気づきました」と、透明なアクリル板の向こうで眉毛をハの字にして頭を掻いた。

「何か自分のプラスになることをやりたいと思ったけれど、何もできなかった。多分、世の中には、身体を鍛えた人や本格的に語学を勉強した人、技術を身につけた人、本をたくさん読んだ人とか、いろんなことを新たに始めた人がいたと思う。でも僕の場合は、全く何かに手をつけることはありませんでした。仕事があることはあったので、それを有り難いことだと感じながら、仕事をしないでいい時間は、平々凡々と、ウジウジしながら過ごしていました(笑)」

次のページ