日テレはフジ不振研究


 日テレの姿勢はハッキリしている。


「フジとの戦いに勝てば、TBSに負けてもいい」(萩原局長)


 そんな日テレは現在、トップを守るため、フジの転落を「反面教師」として調査しているという。
 小杉編成部長のフジ転落の結論はこうだ。


「一つは仮想敵国を作らなかったこと。もう一つは感性に頼る番組作りによっかかりすぎて、データやマーケティ ングを軽視した番組作り。そして一%の視聴率をとりにいくことが格好悪いと思っていることです」


 しかし、フジにとって日テレはライバルではない。従って日テレに学ぶことはないという。
 フジの北林局長はこういう。


「一番最初の柄のネクタイはフジが締める。二番目はどこの局でもいい。いつも新しいこと、新しい番組はうちがやるつもりです」


 かつて視聴率トップに立ったとき、ゴールデン、プライムなどと視聴率を時間別に分け、「うちが視聴率三冠王だ」と宣伝したのはフジだったそうだ。が、フジは、いま、こういうのである。


「視聴率も大切だが、それだけではない。短距離走ではなく長距離走と考えて戦っている」(前田編成部長)


 例えば日テレもマネした大編成局を一年半前に解体、再び編成局と制作局に分離している。
 これは今後のBS、CS放送時代に向けてのものだという。多チャンネル時代にはソフトの確保と放送の方法が問題になるが、ソフトを充実させるため、制作部門と編成部門を分けて専門化させた。
 確かにBS、CS放送時代に向けて、フジはいち早くCS放送に参入。またデジタル時代に向けて東京・台場に新社屋を整備している。

人気K-1日テレも


 一方、日テレは今後、汐留に新社屋を建設する。
 両社は隅田川の河口近くのレインボーブリッジを挟んで対峙して争うことになる。
 さくら総合研究所の西正(にしただし)上席研究員はいう。


「BSデジタルはとにかくカネがかかる。その点、先に新社屋を建設したフジが財務的には有利だ。が、ソフトの面ではプロ野球巨人戦がある日テレが有利。フジのドラマの再放送には克服しなければならない権利問題があるんです」


 BSデジタル放送は二〇〇一年にスタート。そのソフトの問題で浮上したのが新格闘技「K-1」だ。
「K-1」はこれまでフジテレビが独占してきたが、昨年秋から日テレも放映を始めたのである。
 まだメーンではない日本人選手の試合だけだが、「K-1」は空手道場「正道会館」が主宰、フジテレビと提携して盛り上げてきた。
 K-1中継は現在、ゴールデンタイムで高視聴率を稼ぎだす人気番組に成長しており、「BSデジタル時代を迎えるフジの切り札になる」と、業界内では見られていた。
 日テレが放映できるようになった背景には、K-1の今後の展開をめぐる方針について、フジと正道会館の見解の違いがあったという。
 そのいきさつについて、石井和義館長は語る。


「私はK-1発展ため、早く日本人のスター選手を出したい。そのためにも裾野の部分である、日本人選手たちの試合も盛り上げていく必要があると思った」


まず話を持ちかけたのはもちろんフジだったが反応は良くなかった。
その後、プロモーターとして、好条件を出した日テレと話し合いがついたというのである。
今後ともフジとの関係は大切にしていきたいという石井館長の言葉で、気になったのはこんな一言だった。
「話し合いは昨年六月までに結論を出すことになった。それなのにフジは約束の期日に返事も来ない。月末まで待ってこちらから電話したんです」

(AERA編集部・大島辰男)

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