コンビニ店員の名札も
コンビニや飲食業界でも実名掲示を改める動きが広がっている。セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソンのコンビニ大手3社はいずれも、従来は実名(姓)で表記されることが多かった従業員の名札について、本名以外で表記することを正式に認めている。ビジネスネームとはやや異なるが、イニシャルで表記したり、「店長」「スタッフ」などと表記したりしている例が多い。
都内の店舗でアルバイトする大学生の女性は言う。
「名札に実名が書いてあったときは、名字だけとはいえ不特定多数に名前を晒すことが少し不安でした。お客様から『へぇ~、○○ちゃんっていうんだ』と話しかけられて驚いたこともあります。名前を出さなくていい今の名札は、働きやすさにつながっていると思います」
プライバシー保護やカスハラ対策として主に接客業で導入されるビジネスネームは、あくまで顧客に見られる際の名前であるケースが多い。一方、別の理由でビジネスネームを導入し、社内外のやり取りに広くビジネスネームを使用している企業もある。
建設機械レンタルなどを手掛けるレンタルのニッケンでは、全社員がビジネスネームを使用して仕事をしているという。同社は「ビジネスネームについての取材は受けられない」としているが、ホームページでは、「会社の玄関をくぐったら、プライベートな立場から、スイッチを切り替えて、プロの意識を持って、仕事をするべきである」という考え方を定着させるためと説明している。名刺にはビジネスネームを大きく表記し、小さく本名を併記しているようだ。
社員の様々な事情考慮
AIテキスト解析ツールの開発などを手掛けるレトリバでは、2021年からビジネスネームの使用を認めた。従来は戸籍上の実名で働くことを原則としていたが、旧姓使用を制度化するのにあわせ、本名とはまったく別のビジネスネームも使えるようにしたという。同社管理部長の森兼和八さんは言う。
「社員が抱える様々な事情を考慮して、自分が使いたい名前を使えるようビジネスネームの制度を導入しました。多様性を尊重し、個々人がより働きやすい環境にするための制度です」