「ジュリアード音楽院ではセルフプロデュースの技を学べるキャリア教育の授業が充実していました」と廣津留さん(撮影/吉松伸太郎)

 そもそも音大に入れるレベルにまで楽器を究めたことは、かなり強みだと思うんです。私もハーバードの受験ではバイオリンを長く続けてきたことを自分のアピールポイントの1つにしました。もちろんそれだけでは大学には到底入れませんが、体育会系のスポーツと同じように、音楽も一定のレベルまで到達するには努力を継続しなければなりません。つまり、音大に入った時点で、粘り強くやり続ける力があるという証明になりますよね。小さい頃から何年も一つのことに努力し続けられる人ってなかなかいないから、その強みを上手にプレゼンして、音楽だけに関わらず、やりたいことをしていけばいいと思います。

 そういう意味では、大学のキャリア教育の授業が大事になるんじゃないかな。ジュリアード音楽院では、プロの演奏家としてどう活動したいかという前提はありましたが、レジュメやプロフィールの書き方、短い時間で自己PRや自分のアイデアをプレゼンする「エレベーターピッチ」のテクニックなど、セルフプロデュースの方法を学ぶ授業が充実していました。セルフプロデュースの力は、音楽に限らずいろんな場面で役立つことなので、キャリアパスが広がるように感じましたね。

Q. ジュリアード音楽院の同級生には、どんな道に進んでいる方がいますか?

A. やはりオーケストラに入るなど演奏活動をしている人が多いですけど、必ずしも演奏家になる人だけではありません。例えば楽器を売るビジネスをしている人がいます。自ら楽器を弾いて、その良さを語ることができるから説得力があるんですよね。これもある意味、楽器を弾ける人にしかできない仕事です。

 ユニークなところでいうと、最近では海外のコンクールはオンライン配信されることが多いので、配信版の案内役や舞台裏レポーターなどを務めている人もいます。音楽の知識があるのはもちろんですが、演奏者として舞台に立ったこともあるので、インタビューや解説がより深いものになるんですよね。やや特殊な世界ではあるんですけど、それぞれがそうやって自分の強みをうまく生かせる道に進んでいると思います。結局、どんな道に進もうとも、いかに自分を客観視してセルフプロデュースができるかが大事なんじゃないでしょうか。

構成/岩本恵美 衣装協力/BEAMS

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