いとう・れん/東京大学卒業後、外務省入省。在米国大使館勤務、総理大臣通訳官などを経て2015年からメルカリ執行役員。23年、Sakana AIを共同創業(撮影/写真映像部・東川哲也)
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「2025年」といえば、超高齢化社会が到来し労働力不足や社会保障費の増大など問題が山積みだ。そんな重い空気を吹き飛ばし、道を切り開く人たちがいる。中でも注目は、Sakana AI COO伊藤錬さんだ。AERA 2024年12月30日-2025年1月6日合併号より。

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 2024年9月、三菱UFJフィナンシャル・グループやNEC、第一生命など国内大手12社から100億円超の出資を受けた。その少し前にはアメリカの半導体大手、エヌビディアも大株主に加わっている。創業から約1年で、Sakana AIは世界の名だたる企業から300億円以上を調達。その企業価値は15億ドル(約2270億円)にも達するとされる。企業価値10億ドル超の未上場企業を意味する「ユニコーン」には、日本最速で名を連ねた。

 同社はGoogle出身の研究者ら3人が東京で創業したAI開発スタートアップだ。共同創業者でCOO(最高執行責任者)の伊藤錬さんは、同社が世界から注目を集める理由について、二つの視点からこう話す。

「一番大きいのは、その技術に着目してくれていること。生成AIの開発は、莫大な資金を投じて規模を大きくするほどいいものができる『the bigger, the better』が当たり前の世界でした。しかし、私たちは小さなモデルを掛け合わせて性能を上げる『進化的モデルマージ』という技術を開発しました。エヌビディアを始め、各企業はこうしたアプローチに注目してくれているのだと思います。二つ目は、AI産業の集積地であるアメリカ西海岸ではなく、日本に拠点を置く企業であること。新しく、おもしろいことをやるにはこれまでの中心とはあえて距離をおいたほうがいい。私たちは、世界トップレベルの人材を東京に集めています」

リーズニングに注目

 2024年、私たちの生活・仕事でも、生成AIを活用するシーンが増えてきた。代表的なのが、ChatGPTに代表されるAIチャットボットだろう。仕事で行き詰まったときの相談相手に、あるいは長い文章を要約したり、ネイティブ以外の言語に翻訳させたり。一方、開発の現場から見ると、AIにとっての24年はどんな1年だったのか。そして25年の注目点は。伊藤さんは、生成AIの研究開発においても、使い道においても、24年、そして25年が一つの分岐点だと話す。

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