「目覚めよ日本人」
「TVの洗脳を解け」
母のSNSを読み解くと、陰謀論を唱えるカリスマ的な動画配信者の存在が確認できた。
ほぼ全員が家族と「断絶」
コロナウイルスを裏で操っている世界的な「闇の組織」があり、「真実を知った」我々は、組織と戦っているというストーリーだ。
母は完全に“信者”になっていた。
ぺんたんさんは、さらに踏み込み、音声のみでやり取りする陰謀論者たちの交流サロンをネット上で見つけ、対話を試みた。
話してみると、みんな「普通の人」。純粋に陰謀論を真実と思い込み、世のため人のために拡散しようとしていた。
「真実を知ったから、新しい仲間と出会えたんです」
そう話す彼らのほぼ全員が、家族と断絶していた。
「陰謀論者=悪人ではない」
母と同じ陰謀論者との対話を通じて、初めて母の姿が見えた気がした。
最後の望みをかけて…
最後の望みをかけて、ぺんたんさんは母と会った。レストランで、和気あいあいと喋った。「家族だと再認識した、あたたかい時間でした」
だが、コロナの話をしだした瞬間、母の様子が変わった。眼が精気を失い、視線を落としてこうつぶやいた。
「もう大丈夫だから。(世界的実業家の)B氏が処刑されたの」
いい加減にしてくれ、と説得するぺんたんさんに、取りつかれたように「真実」を訴え続ける母。
このとき、ぺんたんさんは、母を「完全にあきらめた」という。
(ライター・國府田英之)
※後編に続く