だが、青学大・一色恭志、駒大・工藤有生、順天堂大・塩尻和也、山梨学院大のドミニク・ニャイロ、拓大のワークナー・デレセら強敵揃いのエース区間とあって、「区間賞は狙っていなかった」という。

 5位でタスキを受けた鈴木は「一色さんと一緒に走れるのがうれしかった」と6人の先頭集団に入り、18キロ過ぎに積極的に仕掛けると、一気に後続を引き離して独走。右足のマメが潰れて出血しながらも最後まで勢いは衰えず、歴代8位の好タイム・1時間7分17秒で見事区間賞を獲得した。

「後半勝負だと思っていた。(最後は)死ぬ気で走りました。最高の気分」と会心の笑顔を見せたニューヒーローの活躍に刺激され、チームも総合5位で、12年ぶりにシード権を獲得した。

 この快走をきっかけに“覚醒”した鈴木は、富士通入社後の2021年のびわ湖毎日マラソンで2時間4分56秒の日本新記録で優勝し、マラソン界のトップ選手になったのは、周知のとおりだ。(文・久保田龍雄)

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